つぐない
とあるβテスター、少女を抱きしめる
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スターとの戦闘でHPを全損させたプレイヤーから、自身の境遇を嘆いて浮遊城から身投げした者まで。ありとあらゆる死因と、その起こった時刻が記載されているだけだ。
……だというのに、この違和感は何だ?何が……引っかかっている?
「………」
おかしい。
何がどうおかしいかと問われれば、具体的な答えを返すことはできない……けれど。
僕は、碑に刻まれたサチの名前に───その隣に刻まれた“貫通属性攻撃”という死因を見た時に、確かに違和感を感じた。
同時に胸に湧いてきたのは、僕にも得体の知れない……嫌な予感。
まるでサチの死について、何か重要なことを見落としているような───
「……ルシェ。サチのギルドメンバーの名前、憶えてる?」
「っユノ、さん……?」
僕の身体から顔を離し、ルシェは泣き腫らした目でこちらを見上げた。
親友を失ったばかりの彼女にこんなことを聞くのは、些か心苦しいものがある。だけど僕は、この違和感の正体を突き止めずにはいられなかった。
サチと親しかった彼女なら、6人しかいないという《月夜の黒猫団》メンバーの名前も、話に聞いているに違いない。
「……、サチ、と……ササマルさん、と……、テツオさん」
僕の読みは当たっていたらしく、ルシェの口から黒猫団メンバーの名が読み上げられていく。
今は亡き親友の名前を口にしたことで、再び涙ぐむ彼女に罪悪感を覚えながらも。たった今告げられたばかりの名前を探し、プレイヤー名の羅列に目を走らせた。
【Sasamaru 6月12日 16時50分 打撃属性攻撃】
【Tetsuo 6月12日 16時49分 貫通属性攻撃】
それらしきプレイヤーの名前を探すのに、さほど苦労はしなかった。顔も知らない二人の死亡時刻は、サチと数分程度しか違わない。
迷宮区での彼らの狩りには、以前ルシェから聞かされた、凄腕であるという例の剣士もついていたはずだ。
にも関わらずサチが死んだということは、その剣士ありきでも対処し切れない事態が起こったということ───大量のリポップに巻き込まれたか、あるいは他の理由か。
何にせよ、サチのパーティメンバーである彼らも例外ではなかっただろう───そんな僕の嫌な予感は、見事に的中してしまったのだった。
本当に───こんな時だけ。
嫌な“当たり”を、引いてしまう───
「…、あと……、ダッカ―さん……と…、ギルド、マスターの……、ケイタさん……」
掠れた声で、途切れ途切れに質問に答えてくれるルシェの姿に、胸に内で罪悪感がみるみる膨れ上がっていくのを感じた。
無理をさせてしまったことを心の中で謝りながら、再度、視線を生命の碑へと向ける。
【Ducker 6月12日 16時45分 貫通属性攻撃】
【Keita 6月12日 16時46分 斬属性攻撃】
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