第二章 終わらせし者と月の女神
第九話
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「何故兄弟が心配なら旅に出た?」
「割と核心をついてきますね。それに……まぁいいです」
一つ呼吸を置く。そういえば神からの啓示としか言ってなかったななんて思う。
「本当にね、神の啓示なんですよね。この剣が証拠なんですけど……」
「この剣か? 確かに名剣なのは見て分かるが、そんな名のある物ではあるまい?」
「ええ、剣自体は名剣程度です。でもこの剣が僕に渡ってきた所が問題なんです」
「ほう、聞かせてくれないか」
「もちろん」
ソールさんは余計に興味を持ったらしい。
「あれは僕が兄と共にヴェルダンに友好の証として使者になった時のことです。あの国には湖が有るのはご存知ですか?」
「あぁ、ノディオンの前はアグスティにいたからな」
「そうですか。では、その湖のほとりにある『女神の泉』のことは?」
「それも知っている。だが訪れたことはない。どうも胡散臭くてな伝説とはいえ御伽噺だ」
「気持ちは分かります。でもね、伝説は事実でした。確かにあの泉には女神もいて伝説通りに武器をくれました。それがこれです」
「ふっ、おもしろい。良くできた話しだ」
これは完全に疑っている顔だ。それも当然だと思う。俺だって普通信じない。
きっと、この前の神の啓示と言ったことも信じていなかったんだと思う。だから俺も最初に言葉を飲んだ。
でも事実、これは紛れもない事実なんだよな。
「なにも証拠はこの剣だけじゃないんです。証人も勿論いてヴェルダンの第三王子、ジャムカ殿もその一部始終を見ていました」
「なにジャムカが?」
「もしかして、ジャムカ殿とお知り合いで?」
「少し剣を教えてやったんだ。まぁ本人は弓の方が得意だったらしいがな」
以外にも僕らには共通の知り合いがいたようだ。そっちの方が驚きだ。
「へぇー。まぁそれで証人もあって証拠もある。それでその女神様にブラギの塔に迎えと言われたんで旅に出ることにしたんです。僕自身、そんな旅が出来る立場でも状況でもなかったんですけど無理やり作りました」
「神など信じるに足るとは思わないが……」
「どうでしょう。でもそれは神は存在していると思っているということですか」
「存在はしているんだろう。だが神という奴は気にくわない。それだけだ」
きっとソールにもなにかあったんだろう。
彼は物事を本能で決める節がある。でもそこには常に理性という物も挟む。
今回の旅に同行するかもそうやって自分の中で決めたのだ。
この旅で何が得られるかわからないが、俺にとっては良い物を得られるように神に祈ろう。
久しぶりにそう思った。
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