第二章 終わらせし者と月の女神
第九話
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した」
フレデリクの言うことに興味を示す二人を尻目に、フレデリクはセレーネが眠っている部屋をそっと空けて手招きをした
「マリアさん。お願いします」
フレデリクが手招きをすると、その部屋から一人の女性が出てきた。
「お二人とも、はじめまして。マリアといいます。これからよろしくお願いします」
急にそんなことを言われたものだから、二人は戸惑った顔を見せる。フレデリクはまた苦笑いをするしかなかった。
「そうさきほどの私の案というのは、その呪いを解くことのできる人物を手元に置いておくという案です。だから二人には理解してほしい、今日からこのマリアさんは我らの仲間となります」
剣士ソールは、なんとも妙な雇い主にあたったものだと考えていた。
剣術を筆頭に槍も斧も、それに魔法だって一通り使えるような少年。
素性もはっきりしている。ノディオン王国の王子。兄は先日、国の王となったエルトシャン。余りにも早すぎる旅立ちに未だに領地も拝領されてない。
なぜ、そこまでして旅をする必要があったのか。王族で現王の弟に当たるロキは、決して愚かでもない。
逆に頭が切れる印象がある。そんな彼が秘密裏に旅をする理由が如何せん掴めない、神の啓示など信じるに値しない。
かくいう俺は、ロキを別に嫌いではない。しかし、本能的なものが警戒を解かせない。
きっと奴が持つ雰囲気にどこか陰惨な物があるからだろう。
話しても不快に感じたりもしない。だが好きになれない。
俺の雇い主は、そんな少年だ。
「ソールさんは兄弟は?」
「いない」
「出身地のほうは?」
「くだらん、なぜ聞く?」
「この前、教えてくれるって」
「それはいずれだ」
「そうですか……」
ソールさんは、どうも俺に対して一歩どころか二、三歩引いてるところがある。
雇い主と雇われ者の関係としては間違っているのかわからないが少し寂しく思う。
旅は比較的に順調だ。このペースで行けば余裕でブラギの塔にたどり着くだろう。
なのに一向にソールさんは、距離を保つ。こういう旅って何度も経験してるけど、この微妙な緊張感が漂う旅はめったにない。
旅っていうのは、連帯意識がどうしても出るもんで距離感も自然と縮まってしまう。
「兄さんと姉さん大丈夫かな……」
ふと考えたことが言葉に出てしまった。ソールさんが会話に乗ってくれない以上、どうしても考える時間が多くなる。
「心配か?」
何故かソールさんはこの独り言に乗ってきた。どこか思うところがあるんだろう。
「まぁ、それなりにですね」
「聞いていいか?」
「どうぞ」
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