無いもの/有るもの
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アイコンタクトを送った。キリトも頷くと
「シノン。まず、君に謝らなきゃならない。俺とシオンは、君の昔の事件のことをアスナとリズに話した。どうしても彼女たちの協力が必要だったんだ」
「えっ・・・!?」
「詩乃さん。実は、私たちは昨日の月曜日に学校を休んで、・・・市に行ってきたんです」
「なんで、そんな・・・ことを・・・」
詩乃はキリトの言葉を聞いて青ざめた顔をした。無理もない、自ら血で汚した事実を彼女は目の前にいる少女二人に知られてしまったのだから。
また拒絶される、一人になってしまう───
そんな風に思ってしまうだろう。しかし───
「それはお前が会うべき人に会っていないからだ」
雪羅は今にもこの場から逃げ出してしまいそうな詩乃に対してそう言った。
「どういう、こと・・・?」
詩乃の問いに対して彼は行動で示した。
店の奥に位置するPRIVATEと記された札が下がった扉を開けると、一人の女性が姿を現した。
その姿に遅れるように後ろから一人の少女が小走りで出てきた。
「はじめまして。朝田・・・詩乃さん、ですよね?私は大澤祥恵と申します。この子は瑞恵、四歳です」
「この人は昔、市で働いていたんだ。で、その職場っていうのが・・・」
「・・・町三丁目の郵便局です」
「あ・・・ッ」
詩乃は僅かに声を漏らし、ようやく理解した。今目の前にいるこの女性は自分が事件当時いた郵便局の職員の一人であることを。
しかし、彼女はまだ疑問に残っていることがあった。何故彼らは学校を休んでまでこんなことをしたのか?
しかしその考えは目の前で目尻に涙を滲ませた祥恵の言葉によって遮られた。
「ごめんなさい。ごめんなさいね、詩乃さん」
詩乃本人は何故謝られているのか理解できずただ呆然としていた。
「本当に、ごめんなさい。私、もっと早く、あなたにお会いしなきゃいけなかったのに・・・。あの事件のこと、忘れたくて・・・夫が転勤になったのをいいことに、そのまま東京に出てきてしまって。あなたが、ずっと苦しんでらしてるなんて、少し想像すれば解ったことなのに・・・謝罪も、お礼すら言わずに・・・」
目尻からは涙が溢れ落ち、隣で娘の瑞恵は母を心配そうに見つめる。祥恵は娘の頭を優しく撫でながら続けた。
「あの事件の時、私、お腹にこの子がいたんです。だから、詩乃さん、あなたは私だけでなく、この子の命も救ってくれたの。本当に・・・本当に、ありがとう。ありがとう・・・」
「命を・・・救った?」
「・・・本当に、勝手だよ・・・」
「えっ?」
不意に雪羅が言った一言に詩乃を含め皆の視線が俺に集まった気がした。しかしそんなことはどうでもよかった、雪羅
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