SAO─浮遊城と赤衣の聖騎士
01 剣士誕生
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、青白い月の光が反射して、冷たく輝いていた。
次の瞬間。
──世界が、割れた。
視界に亀裂が走り、無数に分解されたような錯覚を受ける。気が付いたときには何事もなかったかのように『正常化』していたものの、しかし俺は確かに、世界が分解されるのを見た。
「見ろ」
父さんが、腕まくりをする。
そこには、薔薇の花の様をかたどった奇妙な紋章が、深紅に光り輝いていた。風呂に入るとき、訓練を終えたとき。彼の裸体を見ることはあったが、その《刻印》を見たのは初めてだった。
「……俺のようになる、という事は、今の様な常識はずれの力と、そしてこの《刻印》の様な異常を受け入れる、という事に他ならない。受け入れたなら、お前の元に今までの生活は戻ってこないだろう」
それでもかまわないのならば、来るがいい。
父さんは、そう、静かに告げた。
恐ろしかった。大切な物を護る為に力を得ようとしたのに、その代償として大切な物達との生活を失わなければならないというのだから。
だが。
だとしても。
俺は、いつか再び、大切な物を護る為に。
「……行く。俺はそっちに、行く」
しっかりと、答えたのだった。八歳の、秋のことだった。
次の日、来客があった。長い黒髪を纏めて、肩から前に垂らした、和服の男。時代錯誤と言っても過言ではない、まるで時代劇で見るような旅装束。ただしその腰には二本の刀。それが彼もまた、ライセンス保持者なのである、という事を示していた。
「おお、貴殿が団長のご子息でござるな」
にこり、と男は俺に笑いかけた。団長と言うのは誰のことか。父さんのことだと推測できるが、なぜそんな名前で呼ばれているのか。そもそもこの男は誰なのか──
「和人、コイツはヤマト。夕日暮大和だ。お前に、俺達の領域を……《夜ノ明ケ流戦闘術》を教えるために呼んだ。昔の知人だ」
「よろしくでござるよ、和人殿。某がヤマト・ユウヒグレでござる。ヤマトと呼んで下され」
「はぁ……よ、よろしくお願いします……」
昨夜、父さんたちが存在する『異常者の領域』に足を踏み入れることを決心した。が、いきなり師範がやってきても、困惑するだけである。
「早速でござるが、和人殿は武術の心得は?」
「えーっと、父さんから教えられて、剣術が少し……なんですけど、その」
そこで歯切れを悪くする俺。父さんの方をちらり、と見る。すると彼は、俺の方を見て頷いた。許可が下りたらしい。
「俺……《二刀流》が得意なんです」
父さんから聞いた。順当な剣術に於いて、《二刀流》とは禁止されることではなくても、扱いが難しく、敬遠される戦術である、という事を。父さんは何
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