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SAO─浮遊城と赤衣の聖騎士
01 剣士誕生
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由は分かっていない。けど、どうしてか「そうした方がいい」という直感があったのだ。

 すると彼は「おじさん、か……そうか。俺もそんな年か……」などとぶつぶつつぶやいた後に、笑顔になって、言った。

「よかった……もう大丈夫だ。俺が君を助ける」


 こうして、"■■和人"は、"九十九和人"になった。

 九十九家の一員としての生活は、はっきり言えば楽しかった。

 武家屋敷めいたつくりの家は、九十九夫妻が二人で暮らすには少々広く、俺が来たことでちょうど良くなった、と言われた。

 硬次郎は無表情な武人気質の男だったが、内面はひどく優しく、天然で、ユーモアのセンスを兼ね備えた極度の甘党だった。その妻…つまり当時の俺の義理の母親…であった九十九惠花(めぐみか)も、温厚で思いやりにあふれた人で、正直に言ってしまえばかなり甘やかされて育っていたと思う。

 時に厳しく、しかし大概の場合優しく。二人の俺に対する教育方針である。

 幼年時代の俺は、硬次郎の事を『父さん』、惠花の事を『母さん』と呼んでいた。

 さて、父さんがライセンス持ちであるという事は前述した。彼の武器は初対面の時も含めて、いつも腰に差しているあの漆黒の刀。時折駆り出されては、何事もなかったかのように帰還する。

 時には傷だらけになってくることもあった。けどそれでも、父さんが死ぬことだけは無かった。常軌を逸したほどの耐久で、必ず戻ってきたのである。

 本当の両親を喪った俺にとって、それは安心感をもたらす物だった。いつも家にいて、にこにこ笑っている母さんも、俺の心の支えだった。父さんと母さんは仲がよくて、俺が居る目の前でよくいちゃついた。時たま煩わしく思いはしたが、それでも、憧れた。

 いつしか、父さんの様な強い人になりたい、と思うようになっていた。彼のように、己の力で大切な物を護り、必ずその元に帰るような人間になりたい、と思っていた。

 ちょうどその頃に、九十九家の周囲の家の子どもたちと仲良くなり始めていた、と言うのもあるのかもしれない。特にその中の黒髪の少女とはひときわ仲が良かった。

 彼らとの日常を、守りたかった。《彼女》との毎日を、失いたくはなかった。

 そんな思いを、父さんに打ち明けた。貴方のようになりたいと。

「……驚いたな。和人がそんなことを言うとは……」

 彼は呆気にとられたような顔を見せた。仕方あるまい。『それ』が、俺が九十九和人になってから初めての《我儘》だったのだから。

 難しい顔をした父さんは、「ついてこい」と一言だけ言うと、九十九家宅の広すぎる庭へ、俺を引き連れて出た。その腰にはあの刀。

 月光が、庭園を照らす。その中心で、父さんが、ゆっくりと刃をあらわにする。白銀のその刀身に
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