第二百三話 蛟龍と獅子その十二
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「何かあるのやもな」
「何か?」
「何かとは」
「どの家も、武田も上杉もひいては毛利もな」
そうした力のある家がというのだ。
「浅井、徳川、長宗我部にしても」
「ひいては本願寺もですな」
幻庵が氏康に応えた、ここで。
「色を持つ家が」
「本願寺は寺じゃがな」
「全て。織田家に従いその中に入っていっておりますな」
「不思議なことにな」
「色は光であります」
こうもだ、幻庵は言った。
「黒にしても」
「五行にあるな」
「光が集まっておりますな」
「織田家にな」
「織田家も青でありますし」
「何故か色が集まるのう」
氏康もここで言った、気付いた様に。
「妙にな」
「当家も」
「いや、まだじゃ」
それはとだ、氏康はここでは幻庵にこう返した。
「それはな」
「我が家は、ですな」
「うむ。しかし当家も白」
やはり色だった、北条もまた。
「力のある家に色がある家は多いな」
「大抵が、ですな」
「伊達は水色、島津は橙じゃったな」
「左様です」
「その二つの家も色があるからのう」
「やはり続きますな」
「全くじゃ。どういうことかな」
天下全てを見回してもだった、やはり力のある家は有力な大名ばかりだ。そしてその色のある家がなのだ。
「織田家、もっと言えばな」
「織田信長の下にですな」
「集っておる」
「まるで日輪の下に集まる様に」
「日輪か」
「ふとそう思いました」
幻庵の見たところだ、そうなるのだった。
「織田信長が日輪であり」
「その日輪の下にじゃな」
「人が、色を持つ家が関わっております」
「そうなるか。それでは」
こう話してだ、そしてだった。
氏康は信長が城を築くのを見届けた。そのうえで今はまだ信長と戦い続けることを選んだ。そうして小田原城に篭もり続けるのだった。
第二百三話 完
2014・10・26
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