第一部
第五章 〜再上洛〜
五十九 〜新たな決意、去りゆく者〜
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「……桂花。同じ事を言わせる気?」
華琳の言葉に、荀ケは不承不承黙り込む。
その眼は、私を睨み付けたままであったが。
「歳三。桂花とは、麗羽のところで会ったのでしょう?」
「かも知れぬが、私は物覚えが悪くてな。そう言われても思い出せぬ」
「ふふ、そういう事にしておきましょう。どのみち、この娘は貴方を受け入れはしないでしょうしね」
ふう、と華琳は溜息をつく。
そして、私の隣にいる稟に眼を遣った。
「曹操殿。何か?」
「……いえ、歳三が羨ましい、そう思っただけよ」
「か、華琳様! この私が、汚らわしい男と一緒に居るような女よりも劣るとでも?」
すかさず、稟が口を開く。
「荀ケ殿、とおっしゃいましたか?」
「ええ、そうよ!」
「その言葉、取り消して下さい。この場で、直ちに」
冷静ながら、稟の口調には怒りが感じられる。
「荀ケ」
「…………」
私には、返事すらせぬつもりか。
「私を誹謗中傷する程度ならば、まだ良い。だが、我が軍師を貶めるような発言は許せぬ」
「いえ、私は真名を預け、生涯をかけてお仕えする覚悟で歳三様に従っているのです。その歳三様を悪し様に言う事は、即ち私の生き様を侮辱されたも同然。取り消しなさい」
「い、嫌よ! 誰がそんな」
「桂花!」
「か、華琳様! 華琳様こそ、眼をお醒ましになって下さい。この男に誑かせているのがおわかりになりませんか?」
「……桂花。それ以上言うなら、この場で斬るわよ?」
華琳は、剣に手をかけた。
と、その時。
「まあまあ、皆さん穏やかにひとつ。周囲の皆さんがびっくりしてますよ」
その場の空気に似合わぬ、長閑な声がした。
荀ケのように、頭巾を被った少女、いや女子が立っていた。
ただ、此方は猫耳ではなく、狐耳の如き形をしているが。
「銀花、あなたは黙ってなさい!」
「そうはいきませんねぇ、桂花伯母さん。このままじゃ伯母さん、華琳様に斬られちゃいます」
荀ケが伯母……という事は。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私は荀攸、字を公達と申します。以後お見知りおきの程を」
「荀攸……。あの荀家の、ですか?」
「どの荀家かはわかりませんが、私をご存じならば光栄ですね。郭嘉さん」
にこやかな笑みを浮かべる荀攸。
「伯母さん。そろそろ引き時かと思いますよ。……それとも、『お仕置き』しちゃいましょうか?」
「ヒッ!」
途端に、荀ケはビクリと身を竦めた。
「私はどっちでも構いませんよ。で、どうしますか、伯母さん?」
「わ、わ……わかったわよ! 郭嘉、さっきの言葉、取り消すわよっ!」
自棄気味に叫ぶ荀ケに、稟が眉を顰める。
「誠意が微塵も感じられないのですが? 曹操殿、如何思われますか?」
「……そうね。銀花、好
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