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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
五十九 〜新たな決意、去りゆく者〜
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力量と才覚だけで陳留を発展させてきたも同然。土方さんは、ご自身の度量よりも、常に程立さんや郭嘉さん、徐庶さん達を立て、ギョウを復興させたという違いがありますわ。わたくしが理想とするのは、土方さんのやり方ですの」
「私の場合は、己に政治は務まらぬ、そう割り切っているからだ」
「そうですわね、土方さんは武人として優れていますもの。……わたくしには、土方さんのように武に長けている訳でもなければ、華琳さんのような才もない事ぐらい、自覚してますわ」
 自嘲気味に笑うが、袁紹はすぐに表情を引き締めた。
「だから、土方さんの許で学びたい、そう考えましたの。……ご迷惑だとは、重々承知していますわ」
 さて、どうしたものか。
 私は師を気取るつもりもないし、そんな柄でもあるまい。
 そもそも、私は今の立場はあれど、一介の武人に過ぎぬ者。
 歴史に名を残す英雄の一人を、私如きが導いて良いものか。
 ……とは申せ、無碍に断るのもどうか。
 袁紹の表情を見れば、生半可な覚悟でない事ぐらいは伝わってくる。
「袁紹殿」
「はい」
「……貴殿は今まで、常に名家をひけらかしてきた御仁。それが、私のような得体の知れぬ者の門下に入るなど、袁家として許容される行為なのか?」
「……恐らく、一族からは非難されますわね。誇りはどうした、と」
「それでも、決意は変わらぬのか?」
「ええ。わたくしは、袁家の当主。当主が決めた事、四の五の言わせるつもりはありませんわ」
 ……もはや、断る理由もないようだ。
「一つだけ、申しておく。師事するのは勝手だが、私は一から十まで貴殿に教えるつもりはない」
「それでも構いませんわ。近くで、土方さんの為されようを拝見するだけでも」
「……わかった。ならば、好きにするがいい」
 すると袁紹、安堵の色を見せた。
「では、信頼の証として、以後わたくしは麗羽とお呼び下さい」
「真名か、良かろう。私は好きに呼ぶと良い」
「はい。……それでは、お師様と」
 お師様とは……好きに呼べと言った手前、やむを得ぬが。

 余談だが、後に顔良と文醜もこの事を知り、二人の真名を預かる事となった。


「あら」
 出仕の途中、華琳と鉢合わせた。
「麗羽は一緒じゃないのね」
「うむ。何やら別用があると申しておった」
「そう」
 ……傍から、殺気を感じるな。
 華琳の隣に、猫耳のような頭巾を被った少女がついていた。
「……悪運のいい男ね」
「さて。何処かで会ったか?」
「惚けないで! アンタのせいで、私がどれだけ……うう、思い出すだけで寒気が」
 憎悪で人が殺せるなら、私は既にこの世にはおらぬであろう。
 荀ケの眼は、まさにそれであった。
「止しなさい、桂花」
「華琳様! いくら華琳様のご命令でも、この男は……」

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