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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
五十九 〜新たな決意、去りゆく者〜
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「さ、昨夜はとんだ失態を……。お恥ずかしいですわ」
 陣に戻ってすぐに、袁紹が訪れてきた。
 そして開口一番、頭を下げられた。
 以前の、他人を見下すだけの袁紹からは想像もつかぬ姿だ。
「自分で何をしたか、覚えているか?」
「……いえ。ただ、酷く酔ってしまった事は、斗誌さんから聞かされましたわ」
 そう言いながら、頭を抑える袁紹。
 恐らくは、二日酔いなのであろう。
 私は、懐から包みを取り出し、袁紹に手渡した。
「土方さん。何ですの、これは?」
「それは甘草や桂皮、人参などを混ぜ合わせた生薬だ。二日酔いに効く」
「く、薬ですの……?」
 袁紹の顔が引き攣っているようだが、気のせいであろうか。
「私の配合した薬では、信用ならぬか?」
「い、いえ! そうではなく……その……」
「散薬を、水なしで飲めとは申さぬ。水ならば、此処にある」
「あの、そうではないのです。わたくし、実は……薬が苦手ですの」
 顔を赤くする袁紹。
「ふむ。苦いのが原因か?」
「……はい」
 良薬は口に苦し、その言葉通り、この散薬もまた然り。
 効き目は太鼓判を押せるのだが、このままでは決して口にすまい。
「誰かおらぬか」
「はっ。お呼びでしょうか」
 天幕の外から、兵士が入ってきた。
「済まぬが、白湯を一杯頼む」
「ははっ!」
「あの……。お湯でもわたくし……」
「任せておくが良い」

 まだ火を落としていなかったらしく、白湯はすぐに運ばれてきた。
 茶碗の中に散薬と、甕に入れておいた液体を少し入れ、かき混ぜる。
「さ、飲んでみるがいい。それでも口に合わぬのなら仕方ないが」
「……わかりました。いただきますわ」
 意を決したように、袁紹は茶碗を受け取る。
 そして、恐る恐る、一口啜った。
「……え?」
 驚きながら、もう一口。
「苦くありませんわ。ど、どういう事ですの?」
「答えは、これだ」
 と、甕を指さす。
「もしや、蜂蜜では?」
「いや、蜂蜜は高価過ぎる。そのような贅沢品を用いる気はない」
「ですが、この甘味は……」
「これは、水飴と申すものだ」
「水飴?」
「そうだ。玄米を麦芽で発酵させた甘味料だ、これならば蜂蜜ほど値は張らぬからな」
 得心がいったのか、袁紹は茶碗の中身を一気に干した。
「ふう。何だか、人心地ついた気がしますわ」
「即効作用はないが、次第に楽になる筈だ。ただ、今日一日は胃に負担のかからぬ物を食べた方が良かろう」
「…………」
「如何致した?」
 袁紹は、ジッと私を見つめる。
「土方さんは、不思議な方ですわね」
「私が?」
「そうですわ。ご自身では武人と仰いますが、このような知識もお持ちですし、礼儀作法も心得ておいでですわ」
「そのような事もあるまい。私の
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