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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
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目で見たが、釘宮にそんなことどうでも良く、黒いオーラを振り撒きながらメフィストへと言った。
「へぇ…オーブンを壊した以上の急用って…何?」
 メフィストは後ろを振り返ることが出来なかった。ここで振り返れば、きっと数日は悪夢にうなされるだろうからだ…。
「えっと…その件は…」
「その件…は?」
 肩を掴む手に力が入る。それと同時に、メフィストの恐怖も倍増した。が、そんな二人の前に大崎がやって来て言った。
「何やってんすか!早く仕事入って下さいよ!結構客入って、俺らだけじゃ手が足んないんすから!」
 メフィストはその声に、天の恵みを感じた。
 本来なら天を仰いで感謝するなど有り得ない彼が、この時ばかりは心の底からその恵みに感謝したのだった。
「仕方無い…。風冽さん、直ぐにホールへ出て下さい。この件は店が終わってからと言うことで。」
 そう言って、釘宮はニッコリと微笑んで厨房へと向かったのだった。
「悪夢は…終わらないのか…。」
 メフィストは涙目でそう呟くと、一人トボトボとホールへと歩き出したのだった。
 その夜、鈴野夜とメフィストは三時間近くも釘宮に説教され、二人とも真っ青になって震えていたことは…言うまでもない。
 さて、三人が就寝出来たのは、明け方少し前だった。鈴野夜もグッタリして布団に潜り込んでウトウトし始めた頃、彼の耳に囁く者がいた。
「ロレ…ロレ、起きろ。」
「ん…?誰だ…?」
「ロレ…私だ。」
 嫌々ながらも鈴野夜は目を開けて起き上がると、そこには白い衣を纏った者が立っていた。
 男とも女ともつかない中性的な顔立ちで、その身から淡い光を放っていた。
「…ラジエル…。何で貴方がここにいる?」
 鈴野夜の前に姿を現したのは、大天使ラジエルだった。
 ラジエルは神の天幕に入ることを許された数少ない御使いだ。ラジエルは神が語る世の全て…過去から未来を書物に書き留め、膨大な知識を有していると言われている。
 だが、その様な大天使が鈴野夜…ロレの所へ、一体何の用で訪れたと言うのか…。
「ロレ…いつまでそうしているのだい?」
「以前にも話した筈だ。私は…あいつと共に滅びに至るまでこうしている。」
 その答えに、ラジエルはその表情を悲しみで歪めた。
「君は信心深かった。あの時でさえ、君は神を穢すまいと自らを汚した。それに因って神の恵みから遠く離れようとも、君は…」
「もう言うな!遠く過ぎ去ったことを話して何になる!」
 鈴野夜はラジエルをきつく睨んだ。触れられたくない…そう語る目だ。
 そんな彼に、ラジエルは優しく語りかけた。
「ロレ…神は君を愛しておられる。もう充分ではないか?」
 そう言った時、不意に部屋の扉が開かれ、そこからメフィストが入ってきた。
「ラジエル、それは僕と契約しているのだよ。い
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