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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
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切るや、釘宮に視線を変えて言った。
「二十分程で来ますから、古いオーブン取り外しましょう!」
「そ…そうだね…。」
 張り切る小野田に、釘宮はそう返すしか出来なかった。その後ろで鈴野夜が、ホッとして胸を撫で下ろしてたことは言うまでもない。
 その後、三人で壊れた…いや、壊されたオーブンをやっとのことで取り外して裏口から出すと、そこに新たなオーブンが到着した。業者は手慣れた様にオーブンを運んで取り付けると、釘宮へ請求書を渡して風のように去って行ったのだった。無論、鈴野夜は仕事に励んでいるが。
「…小野田さん?」
「何ですか?」
「これ…中古でも、普通は三十万位はするやつだよ…?」
 取り付けられたオーブンの前に立ち、釘宮は如何ともし難い表情で小野田に言った。しかし、小野田はどうと言うことはないと言う風に返した。
「そうですか。でも、十二万で良いんです。他で儲けてるんですもの、たまにはこの位したってバチは当たりませんよ。」
 その言葉に、さすがの釘宮も唖然としてしまった。
「あのさ…君の実家って…。」
「あれ…言ってませんでしたか?私の実家、電気屋なんです。小野田電機って、聞いたことないですか?」
 釘宮は返答に窮した。
 小野田電機…大手メーカーとして知られている。他に小野田電工や小野田電子…と、電気系の会社を幾つも持っている。
 まさか…そんな実業家のお嬢様が、こんな小さな喫茶店で働いてるとは、一体誰が想像出来るだろうか…。
「君、何でこんなとこで働いてるんだい…?」
 不思議に思い、釘宮は小野田に問った。いや…問わずにはいられなかった。
「オーナー、私は私です。家が何であれ、私は私の生きたいように生きます!」
「それは立派だねぇ…。で、何でうち?」
「そりゃもう、鈴野夜さんが来てたからです!」
「…そっちはどうかなぁ…。」
 そこはかとなく呆れ顔で釘宮が小野田を見た時、どこへ行ってたのかメフィストが帰ってきた。
「風冽さん。」
「ッ!?」
 コッソリ入ってきて釘宮の様子を窺おうとしていたメフィストは、直ぐに見付かってしまった自分を呪った。
「こ…これは釘宮様…。」
「風冽さん…今までどこをほっつき歩いてたのかな?」
 ニッコリと微笑む釘宮に、メフィストはこれまでに無い程の恐怖を感じて後退った。今、ここで逃げ出さなくては…きっと悪いことが起こる。そう悟ってメフィストはクルリと身を翻したが、その刹那…釘宮にガッシリと肩を掴まれ、メフィストは危うく叫ぶところだった。
「あれ?どこへ行くの?ホールはこっちだよ?」
「あ…ははは…あの…急用を思いだしまして…。」
 このやり取りを目の当たりにした小野田は、メフィストには悪いと思いつつホールへと逃げ出し…いや、仕事をしに向かった。
 そんな小野田を悲しげな
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