第一話
I
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宮の背後からそれを制するように声が掛けられた。
「君、そんなに彼が欲しいのかい?」
「…!?」
驚いて振り返ると、そこには長い赤毛を靡かせ、黒い外套を纏った青年が立っていた。
「神出鬼没にも程がある!」
「まぁまぁ…何ならこの僕がお相手を…」
「いらんわ!」
釘宮は何かバカにされていると言った風に怒っているが、赤毛の青年はさも可笑しいと言った感じに笑いを堪えていた。いや、鈴野夜も同じ様だが。
「お前らなぁ…もう少し状況を把握しろよ。」
釘宮は眉をピクつかせながら言うと、赤毛の青年はニッコリと微笑んで返した。
「大丈夫だよ。あれは僕が造ったんだから。」
「そうそう、それなら…って、おいっ!!」
「雄ちゃん、雅くん怒ってるんだけど?」
「あぁ、あれはいつものことじゃないか。」
「って言うか…面白い。」
「それは言えるね…。」
二人の丸聞こえこそこそ話に、釘宮は我慢の限界に達していた…。
「己らは…。」
そう呟いた釘宮の目がギラリと光り、その拳は目の前の二人を瞬殺した。
「す…すいません…。」
「もう…しません…。」
そうして二人は釘宮の前に正座させされ、状況を説明し始めたのだった。
「ってか…何でメフィストがネット掲示板なんぞ造ってるのかって話だ。」
「だって…一人で詰まらなかったんだもん。」
「可愛く言ってもダメ。歳いくつだっつぅの!」
「…すいません…。」
メフィスト…釘宮にそう呼ばれたのは、あの赤毛の青年だ。
そのメフィストは釘宮に怒られていじけている様で、両手の人差し指をツンツンと合わせている。隣では鈴野夜も同じ様子。
「大体、お前らは何がしたいんだ?日本くんだりまで来て、遣ること為すことハチャメチャじゃないか!どうせだったら店手伝えっての!」
「ごもっともです…。」
鈴野夜とメフィストの声がハモった…。
この二人…鈴野夜とメフィストは、この店が建てられてからずっとここにいる。所謂「居候」なのだ。
そして、この二人が遣ってることと言ったら…。
「雄弥、お前が罪無き人を苦しみから救いたいという気持ちは分からなくはない。だが、店を事務所代わりにするんなら、きっちり代金を支払ってもらうぞ。」
「だ…代金…?」
「そうだ。俺は金持ちじゃあない。そういうことで…。」
「そういうことで?」
鈴野夜とメフィストは生唾を飲んだ。一体どんな無理難題を言われるのか…二人は釘宮の言葉を待った。そして…。
「今日から店で働いてもらう。」
「はいぃ!?」
鈴野夜は表情を引き攣らせて叫んだ。
そして隣に座るメフィストをチラリと見ると、彼は外方を向いて知らん顔をしていたため、鈴野夜は眉をピクリとさせながらメフィストの腿をつねったのだった。
「っ痛!雄、これはお前の問題じゃない
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