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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
I
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だが、彼女は鈴野夜と話をしていたにも関わらず、彼の姿に同様していた。目の前にいた人物が、昼間会った青年と風貌が全く違っていたからだ。
 彼女の目の前には今、金色の髪に茶色の瞳をし、シックなスーツを纏う紳士が立っていたのだ。
「私の名はミヒャエル・クリストフ・ロレ。君達は私のことをこう呼ぶだろ?“メフィストの杖"…とね。」
 その男は妖艶な笑みを見せてそう名乗るや、女性は驚きの表情を見せて問った。
「では…貴方が…?」
「君、私に願うことがあったんじゃないのかい?」
 彼にそう言って見詰められた女性は、直ぐにハッとなって願いを口にした。
「彼を助けて!」
 その一言で、彼…ロレは彼女の願いを理解した。
「君は…そのお腹の子の父を助けてほしい…そう願うんだね?」
「……!!」
「そんなことは容易く分かるよ。で、君は私に何を対価として差し出すつもりだい?」
 彼女の問い掛けを受け流し、ロレは彼女へと問い返した。すると、彼女はロレの目を見て返した。
「決めてはいないわ。貴方が決めることだと聞いているから。」
 その答えを聞いたロレは、そんな彼女へ微笑み掛けて言った。
「では…その地位を頂こう。」
 その答えに、彼女は首を傾げた。意味が分からなかったのだ。
「地位…?私にそんなもの無いわよ…?」
「いや、君は吉崎財閥の御令嬢。それは立派な"地位"だよ。」
 それを聞き、女性は直ぐ様返した。
「そんなもので良ければ…。」
「契約成立だ。」
 不敵な笑みを浮かべてそうロレが言うや、彼女…吉崎由利香の意識は、深い闇の中へと落ちていった…。



「雄弥!」
「…耳元で怒鳴るなよ…。って、今何時だ?」
 釘宮の怒鳴り声に叩き起こされた鈴野夜が、仕方無く目を開いて時計を見ると…時刻は未だ明け方の五時前だった。
「まぁ君…私はさっき寝付いたとこなんだが…。」
「なぁ、雄。あの女と契約したんじゃないだろうなぁ。」
「したよ。彼女にはあれが必要と判断したからな。」
 その答えに、釘宮の眉がピクリと跳ねた。
「お前ねぇ…この店潰す気か?」
「いいや、全ての契約者の記憶は消してある。絶対に漏れることはない。」
 そう言って欠伸をする鈴野夜に、釘宮は半眼になって言った。
「それじゃ、何であの女は知ってたんだ?それもネット掲示板て…。」
 今更ながらだが、釘宮は昨日女性が見せたネット掲示板について怒っている様だった。鈴野夜が犯人と考えたんだろう。
 だがその様子に、鈴野夜は少々イラッとして釘宮に返した。
「そんなのは知らないよ。あいつにでも聞けよ!」
 そう言うや、鈴野夜は直ぐ様布団に潜り込んだのだった。
「おい、雄!あいつにこんなことが出来るのかよ!ってか寝るな!」
 そう言って布団を剥ぎ取ろうとした時、釘
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