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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
I
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に勤しんだ。多少笑顔が引き攣ってはいたが…。
「ねぇ…大崎さん…。」
 何度目かのオーダーを取りに来た時、小野田が大崎に向かって何か言おうとした。しかし、言わんとしてることが分かっている大崎は間髪入れずに言った。
「もういい加減にしろ…。ってか仕事しろよ!あ、有り難う御座います!」
 大崎が言いかけた時、レジに客が来たために大崎が出た。
「合わせて千五百六十円になります。」
 そう笑顔で対応しつつも、背後から突き刺す様な小野田の視線に悪寒を感じずにはいられなかった大崎だった。
 忙しい時の時間は瞬く間だ。喫茶店とは言えディナーを出しているこの店は、閉店迄かなり混雑する。その中で三人は仕事に集中し、小野田も鈴野夜が気になりつつも仕事をしていると、いつの間にか鈴野夜は店内から消えていた。
「二人ともお疲れ様。もう上がって良いよ。」
「お疲れ様でした。」
 時間は十一時。全てを終え、釘宮は大崎と小野田を帰らせた。
「やれやれ…。」
 釘宮はそう呟きながら店の戸締まりを確認し、二階の住居へと向かって夕食にした。
 彼は夕食を食べながら、昼にあったことを思い返していた。
「しかし…何でネットなんかにうちの名前が?"あれ"が外に漏れるとは思えないんだがなぁ…。」
 誰に問い掛けるわけでもなくそう言って、釘宮は缶ビールの蓋を開けた。
「あいつ…彼女と何を話してたんだか…。」
 そう言ってビールを煽った時、一階から何か物音が聞こえた気がした。釘宮は不審に思い、直ぐに店へと様子を確認するために降りた。
 店の電気を点けて辺りを確認すると、これといって何もない。
「気のせいか…?」
 そう言いながらも、釘宮は一通り施錠などを確認した。万が一、何者かが侵入していたら困る。その為、釘宮は店内を一通り確認していたのだった。
「まー君、何してんの?」
 カウンターから不意に声を掛けられた釘宮は、その声にビクッとして直ぐ様振り返った。すると、そこには見慣れた人物が立っていたのだった。
「鈴野夜…お前、どっから入ってきた?」
「いつも通りだけど?」
 鈴野夜のあっけらかんとした答えに、釘宮は溜め息を吐いて言った。
「はぁ…まぁいい。さっきの音はお前か…。」
「さっき?今入って来たとこだぞ?何かあったのか?」
「いや…何か物音がした気がしただけだ。お前、飯作るんだったら、ちゃんと片付けてとけよ?」
「分かってるよ。」
 ニコニコと笑う鈴野夜に、釘宮は再び溜め息を吐いて二階へと戻ったのだった。
 釘宮が戻ったことを確認すると、鈴野夜は扉を閉じ、恰も始めから人が居ることを知っていたかの様に言った。
「出てこい。」
 すると、奥から一人の女性が彼の前へ現れた。
「貴方…鈴野夜…さん?」
 それは昼間店に来ていた女性だった。
 
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