第一話
I
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
言われた女性は携帯を取りだし、少しして釘宮へととあるネット掲示板を見せた。
「ここに書かれているお店って…ここですよね?」
それを見た釘宮はクルリとカウンターへと振り返り、そこからこちらを見ていた大崎に視線を向けた。すると、大崎は大慌てで首を横に振った。どうやら何も知らないようだ。
釘宮は溜め息を一つ吐き、再び女性へと向き直った。
「この店の名は結構多いんですよ。別のお店ではないのでしょうか?」
釘宮は、とにかく女性に諦めてもらおうとそう言った時、不意に背後から声がした。
「それってさ、閉店後までいると…って話じゃなかったかな?」
ギョッとして釘宮が振り返ると、そこには長身の青年が立っていた。
「鈴野夜…いつの間に来てたんだよ…。」
「これは失敬。さっき入ってきたんだ。それで話を聞くとは無しに聞いてたんだ。」
「お前なぁ…。」
釘宮は半眼でその青年…鈴野夜を見たが、そんな二人を前に女性はどうしたものかと困った表情を見せたため、そんな彼女へ鈴野夜が微笑みかけて言った。
「君さ、一体何を願うつもりなの?あの都市伝説によれば、必ず対価が必要になるけど。」
「分かっています。」
「命取られちゃうかも知れないんだよ?」
「覚悟の上です。」
「ふん…。」
鈴野夜はそう返し、まじまじと彼女を見た。彼女の目は真剣そのものだったが、その中には明らかに切羽詰まった何かが見てとれた。
「ま、暇なら閉店後まで居座ってみれば?」
「鈴野夜!」
釘宮は鈴野夜を制した。釘宮自身は彼女に諦めてもらおうとしていたのだが、鈴野夜のお陰で台無しにされたのだ。
だが、そんな釘宮に鈴野夜は笑って言った。
「まぁまぁ、これと言って害があるわけでなし、何にも無いって分かれば彼女も諦めるだろ?」
「……。」
ここで無理に追い返しても、彼女はまた同じことをすると思ったのだ。
「あ、オーナー。洗い場終わりました…って、鈴野夜さん来てるじゃないですか!大崎さんに洗い場やれって言われたのに…何で呼んでくれないんですかぁ?…で、あの女性は?まさか…!」
「小野田さん。一人で盛り上がってるとこ悪いけど、あの女性は初めてのお客様だよ。少し悩み事があるようでね…。それで鈴野夜が相手をしているだけだ。さ、仕事して。」
そう言われた小野田は未だ何か言いたそうだったが、仕方無しに仕事を再開したのだった。無論、大崎も仕事をしている。サボってるとこを見つかって大目玉…なんてのは誰しも嫌なものだ。
さて、今度は小野田がホールに入り、大崎が厨房へと回った。夕方からは客も増えるため、さすがに小野田では厨房を出来なかったのだ。
その後、少しずつ客が入り始めた。
「いらっしゃいませ。お席へご案内致します。」
小野田は気になる心を必死で抑え、平静を装って接客
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ