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【SAO】シンガーソング・オンライン
外伝:フルメタル・ハーモニー
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た。指先で弦を弾き、メロディを奏でていく。その音色はとても柔らかく、包み込むように暖かい。それを聞いて、俺は不意に両親や嘗ての親友たちを思い出した。
一緒にいるだけで明日を迎えることが楽しくなる。明日もいつも通り変わらずにいてくれる。そんな人達の顔が横切っていく。


涙が出そうな日は、貴方の背中に甘えていたいけれど――

その優しさが辛くなった時、行き場が分からなくなってしまう――

でも、綺麗な光が見えれば、一緒に見に行こうよって――

そうして二人で歩んでいれば、いつか何かが見つかる気がするんだ――

そして、そう思えるのはきっと貴方が隣にいて、いつも支えてくれるから――

独りぼっちじゃないんだって思えるその胸の暖かさこそ――

ほんとうの『愛』って言うのかな――

その愛をくれる、流す涙の意味を知っている貴方だからこそ――

屈託のないその微笑みを探させてほしいの――


歌い終えたユウキは、見ているこっちが可笑しくなるほど緊張しながら小さな声をあげる。

「……ねえ、お兄さん。ううん、お兄ちゃん……ボク達の間にも……その、愛ってある、と、思うんだ、けど……」
「そりゃ何愛(なにあい)だよ?」
「…………えっと……と、とにかく愛はあるでしょ!?し、師弟愛とかさ!」

むきになったように両手を振り回して同意を求める必死なユウキの姿は可愛らしくて、クスッと笑いながら立ち上がる。何愛なのかは分からないが、それでも彼女がとても勇気を振り絞ったことだけは伝わった。
そんな彼女の――俺の想像もつかないほどの人生を潜り抜けて微笑みかけて見せる花のような彼女の笑顔を、俺もずっと見ていたかった。

「ま、どういう愛かってのは分からないけど……お前と一緒に明日を迎えるってのは悪い気がしないよ」
「あ………」

俺は不器用な男だ。女心なんてわからないし気の利いた事も言えない。だからせめて、手を繋いでやるくらいしか思いつかなかった。ユウキは握られた手をぼうっと見て、俺の顔を見て、やがて気恥ずかしそうにえへへ、と笑った。


「なぁ、ユウキ」
「なぁに?」
「……俺は、お前の両親やお姉さんの代わりにはなれない」
「……うん。だってお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。この前歌ってたでしょ?人は他の誰かにはなれないって」
「そっか……そうだよな」

堅苦しい言い方では義兄妹と言うべきなのだろうが、俺は敢えて"かぞく"と名乗らせてもらおうかと思う。これから天涯孤独になった彼女の隣でずっと、そうあろうと思った。
 
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