外伝:フルメタル・ハーモニー
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たユウキの姿はちょっと間抜けで面白かった。
その辺の草原に座り込んでギターの練習に付き合っていたのだが、そろそろ教えることもなくなってきた。彼女の上達には目をみはるばかりだ。
しかし愛だ恋だと言われても、あの大学で三人バンドを過ごしているだけで俺の心は満たされていた。当時は多分あの二人さえいれば他の人類が滅亡しても生きていけるとさえ思っていただろう。
だが、現実は異なる。俺はあの二人と離れて一人では生きていけなかったが、結果として沢山の知り合いたちに助けられることとなった。恋こそしなかったが、随分世界を見る目が変わったと思う。
本当に、変わったものだ。数年前まではこうしてユウキと一緒に歌を歌う日々が待っているなどと露にも思わなかった。ただただ楽しい毎日が続くものだと思い込んで平穏を享受していた。その平和がどれほど尊いのかを理解もせずに。
「ラヴねぇ……そういうお前は恋しないのか?キリトなんかどうだ……いや、ないな。自分で言っておいてあれだがあいつは色々とおすすめ出来ない。女たらしで競争率高いし、隣におっかない奥さんがいるからな」
「だよねー。アスナの旦那さんには流石のボクも手を出す気にならないと思うなぁ。っていうか、ボクもまだ恋ってよく分かんないや」
「つまり人生負け組一直線か。哀しい集まりだなぁオイ」
「うーん………ボクに恋人が出来なかったら本当にそうなるかも。ほら、ボクって経歴的にもとっつきにくいと思わない?」
「俺は気にしない」
「………そ、そうなんだ……」
ユウキは尻すぼみにぼそっと呟くと、そのまま顔を俯けてしまった。心なしか顔が赤いような気がするが、体調不良だろうか。
それにしても恋か、と俺はぼんやり考える。人生が尽きるまでに一度くらいは燃え上がるような恋をしてみたいような気はする。が、他人に夢中になる自分のビジョンが不明確で想像も出来なかった。
そういえば、3人でいた頃はそんな話もした気がする。グラビアアイドルで誰が好きかとか、アニメヒロインの誰が一番好きかとか、その手の話が好きだったわけでもないのにどうしてか楽しかったのを覚えている。
そんな話も、離れ離れになってからはどうしようもなく切ない思い出に思えた。もう二度と、あんな話を楽しめる日は来ないかもしれない。ユウキ以外のバンドメンバーが現れたとしても、同じことはもうできないんだ。
「はぁ……悲し過ぎて涙がちょちょぎれそうだ」
寂しさを紛らわすようにおどけて見せる。すると、黙っていたユウキがすくっと立ちあがった。
「ね、ねぇお兄さん……」
「んん?何だユウキ。ちょっと声が上ずってるぞ?」
「い、いいから!……あのね、お兄さん。ボク、恋は分かんないんだけど、愛ならちょっとは分かるよ?」
そういうと、ユウキはギターを手に取っ
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