外伝:フルメタル・ハーモニー
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ノンは、今頃になって何故ブルハという男がそれほどまでに周囲から一目置かれているのか真実の一端を垣間見た気がした。彼の歌の歌詞は、まるでシノンこと朝田詩乃の過去のトラウマをなぞっているような内容だったからだ。
それは本当に偶然か、もしくはキリトの事を彼なりに解釈した結果だったのだろう。
かつて、この手は一人の人間を殺した。その罪は今も消えたわけではない。そのトラウマには散々苦しめられたし、キリトのおかげである程度克服したとはいえ、未だに忘れる事が出来ない――いや、忘れてはいけない出来事だ。
一人で戦うと前に出たのに、想像通りにうまくはいかずに散々虐められた。
もがいてももがいても前へは進めず、臆病な自分と足を引っ張り合った。
今になって思えば、私は過去を克服したかったのではなかったのかもしれない。
書き直したかったのだ、あの忌まわしく纏わりつく過去を。
(危機的状況を逆転、か……もしもキリトと出会う前の私がこの歌を聞いたら、どうなったんだろう?)
キリトもまた過去の幻影と戦っていた。でも、この歌を通してキリトが感じた幻影は、私が見出したものとは違うものの筈だ。つまり――ブルハの歌と言うのは皆にとってそういうものなのだ。たった一つのものにも感じられるし、とても広い意味にも考えられる。皆はきっと歌を通してそこに自分の像を垣間見るのだろう。
つまり彼が凄いのではなくて、各々が勝手に彼に意味を見出しているのだ。
それは何というか、その、一言で言えば……
「変な人。凄いんだか凄くないんだかよく分かんない」
「ある時はプレイヤー、ある時はミュージシャン、またある時はカウンセラー………しかしてその実態は!絶剣ことボクのお兄さんにしてリーダーなのです!!」
「カウンセラーは少なくとも絶対違うから絶対に俺の所に悩み事持ち込むなよ!?」
「またまたー!実績ある癖にー!」
「お前らが勝手に答えを見つけただけだろ!?ユウキに至っては俺本当に何もしてねぇし!!」
病気の彼女の助けになるようなことをしていない、と言う意味では合っているが、事情を知る人々の間では歌で奇跡を起こしたと専らの噂である。何かしているようで、何もしていないよう。ゲームもせずに歌ってるだけなのにゲーマーからは尊敬されてる。
やっぱり変な人だ、とシノンは小さく笑った。
= =
ある日、ユウキにこう聞かれた。
「お兄さんってさぁ、全然ラヴソング歌わないよね」
「ん……そうだな。確かに俺はラヴソングはあんまり歌わないなぁ……アレかな、恋したことないから共感できないのかね?」
「自分で言ってて悲しくないのお兄さん……」
「やかましいっ!その憐れんだ目を止めろ!」
ぶにっと頬をつついて黙らせる。むが、と変な声を上げ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ