外伝:フルメタル・ハーモニー
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局は歌いたいだけなんだよ、お兄さんは」
「はぁ………キリトとは違う意味で変人だわ」
頭を抱えられようと、この思いつきで俺は今まで乗り切ってきた。その力を見せてやろう。
弱みや本音を誰かに吐き出したくなるのは――
そうしないと自分の存在を見失いそうになるからだ――
どうにか切り抜けて先に進んだと思ったとしても――
理想と現実が喧嘩して、ひどい泥仕合の中をもがく羽目になる――
俺には無理だ、結局駄目だって嘆いている自分の姿が本当は一番煩わしくて――
それがいつの事かも覚えていないくせに、ずっと心の隅で足を引っ張るんだ――
キリト、お前は何度も願った筈だ。忘れたいとか消えてしまいたいとか。でもその度にぽつりと本音を漏らしたりふらりと俺の下に現れた。
死んだプレイヤーを生き返らせたいと、あいつは願ったそうだ。死者蘇生のアイテムが存在するかもしれないと、あいつは想像してしまった。
お前はきっと、出来ないと分かっていてもやり直したかったんだろう。センチメンタルだが、ドライな言い方をすればそれは無駄な事だ。過去に向かう想像力は未来を変えることはないからだ。
でも、だからといってそれが無意味とは限らない。過去への想いが逆転して今を支えることだってある。あいつはきっとそうやって強くなってきた。
駄目な自分も嫌な過去も、全部消去して上書きしてしまえ――
思い出すのも下らない、でも決して忘れ得ぬその忌まわしい想いを――
叶わない想いも、現実を知った嘆きも、自分についた嘘さえも――
いっそ逆転させてしまおう。全部書き直して、危機的状況を逆転させろ――
意味のない物をバネに組み込んで、弾かれるように進むんだ。そう、全身全霊で――
その叫ぶような曲を歌い終えた。
あいつへの恨み節を利かせる筈が普通に応援してしまったことに気付いて「なんだかなぁ」と思いながらふとユウキとシノンちゃんの方を見ると――何故かシノンちゃんが俺の方を睨んでいる。何か気に入らなかったんだろうか。
話を聞いてみると、彼女はどうやら誰かが俺に彼女のプライベートな情報を与えたと思っているらしい。そんなわけねーじゃん?大体俺の周囲にいる奴等って基本的に「え?ブルハさんには話して無かったっすかね?」と平気な顔してすっとぼける奴ばかり。ユウキの素性だってあいつらは完全に俺も知っているものだと思い込んでたらしい。
そんなわけねーじゃん、というかシノンちゃんの経歴ってこの歌に符合してるんだろうか。質問してみると彼女は墓穴を掘ったと言わんばかりに顔を赤くした。完全に彼女の勘違いだったようだ。
まぁ喋りたいものは喋らなくてもいいだろうと思い、俺は別の歌を適当に歌って路上ライブを続けた。
一方のシ
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