つぐない
とあるβテスター、二人を見守る
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く落ち込んでるの、あたしはわかってて。なんとかしてあげたいなって思ってたんですけど……。でも最近、ちょっとずつ元気になってきて。あたしが何かあったのかって聞いたら、あの子、どうしたと思います? 顔を赤くして黙り込んじゃったんですよ!」
……えっと。
顔を赤くして黙り込んじゃったってことは、それって、つまり。
「何があったのか聞いても全然教えてくれないし!最近じゃその人の話になっただけで、顔が真っ赤になるんですよ!どう思いますか、ユノさん!」
「え、えーっと……」
どう思いますかと聞かれても……どう答えればいいんだろうか。
僕、その手の話には疎いというか、自分に縁がないからなぁ。
「……サチは、その人のことが好きなのかな。だから、元気になったのかな」
「う、うーん……、どうだろう……?」
「その人がギルドに入ってからは、サチ、本当に明るくなったんですよ。 前はギルドで狩りに行くの、あんなに怖がってたのに。……ちょっと、悔しいです」
「………」
「サチがギルドのことで落ち込んでた時、あたしはただ怒ることしかできなくて。でも、それじゃダメだったんですね。あたしはサチのこと、元気づけてあげられなかった。 ……親友、失格ですね」
しゅんとした声でそう言って、ルシェはテーブルに置かれた紅茶のカップへと視線を落とした。
本当に、この子ときたら……どこまでも、親友思いだ。
そんなだから───僕は、何とかしてあげたくなるんだ。
「そんなことないよ。ルシェがああやって怒ってくれたこと、サチはきっと感謝してる」
「そう、でしょうか……」
「少なくとも、僕はダメだったとは思わない。誰かが自分のために怒ってくれるって、すごく……嬉しいことだよ」
「ユノさん……」
───僕が、そうだったから。
リリアやシェイリが、僕のために怒ってくれた時。
自分が情けなくて、みんなに申し訳なくて。自己嫌悪や罪悪感が、胸の内でごちゃ混ぜになって。
それでも、二人がそんな風に言ってくれたことが、自分のために怒ってくれる人がいるということが。
僕は、とても嬉しかった。
泣いてしまうほど───嬉しかったんだ。
「大丈夫。君はサチの一番の親友だよ」
「う、ぐすっ、ユノさぁぁん……!」
とうとう泣きだしてしまったルシェに、苦笑いしながら。
僕は、この二人が、これから先も───いつかこのゲームがクリアされて、現実世界に戻れたとしても、それからも。
あんな風に、他愛もないことで笑い合えるような。
こんな風に、相手のことで真剣に悩むことができるような。
そんな、親友同士であって欲しいと。
ずっと変わらずに、親友同士であって欲しいと。
そう───願っていた。
月夜の黒猫団が迷宮区で壊滅し、サ
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