つぐない
とあるβテスター、二人を見守る
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た様子のサチに、僕は頷いた。
正確には「ほぼ無傷」といったところだけれど、それでも大盾《タワーシールド》を携えた壁役の防御力は目を見張るものがある。
装備やステータスに大きな差がなかった第1層の頃とは違い、壁役やDD《ダメージディーラー》といったパーティ内での役割が確立している現在では、プレイスタイルによって生存率が著しく変わってくる。
事実、最前線での戦いはリリアやシェイリのようなDD《ダメージディーラー》よりも、防御に特化した壁役のほうが生存率が高い。
敵の前に出るということで危険なイメージを持たれがちだけれど、実際は重装備を着込んだ壁役のほうが、遥かに安全に戦えるというわけだ。
ただ、問題は───
「じゃあ、サチも片手剣士に転向したほうがいいってことですか?」
「……いや、それはやめておいたほうがいいかな」
「え……」
問題は。
いくら壁役の生存率が高いといっても、最終的な生存率はプレイヤー自身の、プレイスタイルへの適正や性格に左右されるということだ。
どんなに強い武器を持とうと、使い手の力量が見合っていなければ全く無意味なのと同じで。
壁役の生存率が高くても、片手武器の扱いに慣れなかったり、そもそも性格的に前衛に向いていないプレイヤーだっているだろう。
そして僕が見たところでは、サチは後者だ。
盾に隠れれば安全だとわかってはいても、敵に近寄ること自体が怖くてたまらないといったタイプだろう。
壁役は安全に戦えるといっても、敵を前にして身体が竦んでしまえば本末転倒だ。
どんなに堅い盾を持とうと、使い手が防御できなければ意味がないからだ。
ちなみに。そのあたりを自覚しているリリアは、重装備こそしているものの、立ち回りは防御よりも回避に重点を置いている。
盾を持たないことを疑問に思った僕が聞いてみると、「馬鹿ぬかせ。んなモン盾ごと割られたら終わりだろうが!」という、実にヘタレな彼らしいコメントを頂いたのだった。
その分、回避だけは異様に上手いので、彼にとってはこれが理想のプレイスタイルだったのだろう。
閑話休題。
とにもかくにも、そういった理由で、使い慣れていない武器やプレイスタイルへの転向は、個人的には賛同しかねるところだった。
戦闘中に行動を躊躇してしまうようでは、むしろ敵との距離が縮まった分、ちょっとした判断ミスから事故を引き起こす可能性だってある。
前衛の不足しているパーティは、確かにバランスが悪い。
だからといって、性格的に向いていないサチに前衛を無理強いするべきではないだろう。
サチの意思を尊重した上で、自分に一番合ったプレイスタイルを選ばせるべきだ───というのが、この件について僕が出した結論だ。
……更に言うなら、彼女のようなタイプは戦いには向いていな
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