つぐない
とあるβテスター、二人を見守る
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われていること。
敵の前に出るのはとても怖いのに、パーティ内では自分のスキル熟練度が一番低いため、拒否権がなかったこと。
ギルドメンバーのことは好きだけど、本当は狩りに行くのは嫌だということ───
今にも泣き出しそうな顔をしている親友の姿を見て、ルシェは何事かと問い詰めた。
そうして、サチの口から理由を聞かされ───激昂した。
「ルシェ、落ち着いて」
「ユノさん……」
ルシェにしてみれば、親友を危険な目に遭わせようとしているギルドメンバーが許せなかったのだろう。
放っておけば直談判に行きそうな勢いだったので、今にも席から立ち上がろうとしていた彼女を何とか宥めた。
「気持ちはわかるけど、サチを責めたって仕方ないよ」
「でも、ユノさん!前衛なんて危ないこと、サチには───」
再び怒気を孕んだ声で抗議しようとするルシェを、僕は手で制した。
「それに、彼らの言うことも一理ある」
「……え?」
そう言うと、ルシェの顔に失望の色が浮かんだ。
サチの転向には僕も反対するものだと思っていたようで、僕がギルドメンバーの肩を持つ発言をしたことで、裏切られたように感じたのだろう。
短絡的と言えなくもないけれど、それを責めるつもりは僕にはなかった。
ここまで真剣に怒るということは、それだけサチのことを大切に想っているということだ。
「前衛と聞くと危ないイメージがあるかもしれないけど、実は盾持ちで壁役《タンク》として戦うプレイヤーのほうが、戦闘でやられる可能性が少なくて済むんだよ」
「……どうしてですか?」
色素の薄いライトブラウンの瞳が、訝しげに僕を見つめる。
彼女の疑いを解消するべく、僕は自身の経験からくる持論を話し始めた。
「えっと……、例えば動きの速い敵と戦ってるとして、敏捷値寄りのステータスでも避けきれなかった場合、敵の攻撃を受けることになるよね」
「……はい」
「こっちのHPが100で、相手が一撃で60とか70くらい持ってくような敵だったとしたら、攻撃を2回受けた時点でアウト。クリティカルをもらった時は、下手したら一撃でやられることだってあるかもしれない」
「………」
サチが───もしくは自分が、敵にやられるところを想像したのか。
ルシェが形のいい眉を顰めたことに、あえて気付かない振りをして、僕は続ける。
「避けにくい攻撃をリスクを冒して回避するより、最初から盾の陰に隠れていたほうがいい場合が多いんだ。いくら相手の攻撃力が高くても、盾で受け切ることができれば無傷で済むんだからね」
「そうなの……?」
「うん。実際のボス戦でも、僕みたいに離れて戦うタイプのほうが、広範囲攻撃に巻き込まれて危なかったりするしね。そういう時に、最初から防御してた壁役《タンク》は無傷だったり」
半信半疑といっ
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