エピローグ『狩人と黒の剣士』
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とある八月の深夜……
「ん……。んん……」
俺は微かな光に目を覚ます。
掠れた声を喉から漏らし、いやいや瞼を開けて、そして瞬きする。
「……ああ、落ちてたのか」
作業中の寝落ち。プログラマーあるまじき行為だ。作業中に寝落ちしたことなど、コレが初めてだ。
「……相当疲れ溜まってるんだな」
はぁ……、と溜め息を漏らし、ずり落ちた眼鏡を拾い、かけ直す。
ここは、俺が随分昔から所有している研究室だ。アンダーワールド関連の仕事を確実、かつ安全に行える場所はここ以外に無いと断ずる事が出来る。
娘のストレアや、他のメンバーにも教えていない、言わば“秘密基地”的な物だ。
眼鏡をかけ直した目で、その研究室の壁の時計を見ると、午前三時を少し回っている所だ。窓の外では、銀色の月が、まだ高い位置で輝いている。
俺は時計を見て、少し溜め息を付くと、パソコンに向き直る。
すると、新着メールの案内がPCメイン画面に出ていた。
「メール……?菊岡からか……?」
しかし、菊岡なら、このパソコンに直接ではなく、暗号文のメールをスマホに送ってくる筈だ。
俺はセキュリティソフトを走らせて、PCのメールを開ける。
すると、その内容は些か奇怪な物だった。
『白き塔を登りて、かの世界へと至る。
雲上庭園.大厨房武具庫.暁星の望楼.聖泉階段霊光の大回廊』
たっぷり五秒絶句すると、頭に痛みが走る。
「っーーーーーーーー!!!!」
異常な程の痛み。まるで、何かを思い出さんと本能が訴える。
「な、んだよ、これ…… っ!」
頭を押さえると、不意に、記憶が流れてきた。
その現象は、たった十秒で終わると、何事も無かったかの様に、頭の痛みが取れた。
「……これ、アンダーワールドの、消された記憶……なのか?」
薄れた記憶が保管されるように、ピースが一つ一つ繋ぐ。
そして、全てのピースが填まると、俺はPC画面のメールを見直す。
「……思い出した。これは、カセドラルの各フロア名だ」
俺は自分で言った事が信じられず、首を振る。だが、メールは消えない。
つまり、事実を意味していた。
何より、聖泉階段がその証拠だ。カセドラルがまだ小さな教会の頃の遺構なのだ。少なくとも、知っているのは、記憶を失う前のキリト、俺。アンダーワールドでは、アドミニストレータ、ベルクーリ閣下、アリスしかその存在を知らない。
「……しかし、この言葉の意味が理解できないな。マリサ、どうだ?」
すると、メール画面に黒とんがり帽子を被った、如何にも魔法使いと言うような衣装を着るAIが現れる。ユイのデータと、ストレアのデータを混合して一から組み立てたボトムアップAI『マリサ』だ。モチーフは、ダークが出会ったと言う弾幕魔法使いを起用している。
『さぁ?私にもさっぱりだぜ』
マリサは言うと
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