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提督がワンピースの世界に着任しました
第02話 処女航海
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 私、長門が建造されて一ヶ月と少しが経った。その一ヶ月の間は、体の動かし方を確認、艦砲やタービンの調整、他の艦娘達との演習。そして、外海航海の準備、外海航海の旗艦となった私に食料や弾薬を積み込み、その他諸々の作業を行った。

 今は、鎮守府から出港してから一週間が過ぎた頃。この一週間でお決まりとなった、隣に立つ司令官をそれとなく観察する。今の時間は正午を一時間程過ぎたぐらいで、朝からずっと観察を続けていたはずの彼は一向に疲れも見せずに監視を続けている。
 見るものを畏怖させる顔立ちをした彼は今、両腕を組み艦が進む方向に稲妻を思わせる鋭い視線を向けている。身長は私よりも少し高い180センチメートルぐらい。年は見た目から20代後半辺りだろうかと思う。本人に聞いた所、25歳ぐらいだろうという曖昧な答えが返って来たので、本当の年齢は知らない。そして、そんなに若い司令官の下で働くのは、私の知識の中では初めての事だった。

 彼は、記憶喪失らしくて神威鎮守府に来る前の自分の事についてを全く思い出せないそうだ。先ほどの年齢についても、思い出せないから曖昧に答えるしか無いということらしい。しかも、ところどころで常識知識についても欠落しているらしく、よく妖精さんや私達艦娘に質問をしてくる。よく質問すると言っても、彼がただ怠け者や愚か者という訳では全くなく、要領が良く理解力は十分あり、彼は疑問に思ったことについて一言二言を聞いて後は自分で理解してしまう。まさに一を聞いて十を知ると言う思考ができる人間である。

 彼は自分に対して非常に厳しい。私や正規空母の加賀が建造されてからの一ヶ月間と少し、彼は睡眠時間を限界まで削り司令室によく篭っていた。たまに外に出たかと思うと効率よく艦娘達を観察しては、的確に忠告や疑問を投げかけていくと作業を効率化させ、更に自ら動いて仕事を見つけて来てはそれを殆ど完璧に片付けてしまう。第二次世界大戦時や深海棲艦との戦いで指揮して下さった司令官達の能力に較べてもかなり優秀な部類に入ることは明確であり、過去の司令官達に比べてかなり仕事熱心だ。今も艦娘達が、司令官には航海中なので休んでくれと言ったのだが、そんな彼女たちを理論的に説き伏せ、逆に艦娘達には何時でも調子よく戦闘出来るように待機しながら休憩するよう納得させ、艦橋に私と一緒に立っている。そして、今のように海の監視を続けている。人間である彼が、一週間続けているのだから頭が下がる。
……もっと私を頼ってもらってもいいのに、と少し不満だったりもする。

「長門」
「何だ?司令官」
 突然、司令官から声を掛けられ思考が中断させられる。彼に目線を向けると、いつの間にか双眼鏡を構えて、艦の進行方向の少し右側、東南東の方向を観察していた。

「船が5隻見える。確認してみてく
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