第二百三話 蛟龍と獅子その五
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「起きていなくては」
「ここで寝てはかえって身体が動きませぬ」
「頭も冴えませぬし」
「ですから」
「では夜襲を退けた後でか」
「はい、その後で」
「休ませてもらいます」
そうしてからというのだ、実際に。
「ですからまだです」
「起きております」
「わかった、ではな」
それではとだ、信長も頷いてだった。
そうしてだ、二人に確かな声で告げた。
「それならな」
「今は起きて」
「そうして」
「敵を待とうぞ」
信長も飯を食いつつ言うのだった。
「今はな」
「その為ですな」
「兵達に酒を出さなかったのですな」
「今宵は」
「夜襲を読んでいるが故に」
「酒は身体の動きを悪くする」
酔うことによってだ。
「だからじゃ」
「今宵は出さずに」
「あえて置いておきましたか」
「そういうことじゃ」
まさにというのだ。
「酒はこうした時はならぬ」
「戦の時は」
「絶対に」
「飲んでは負ける」
戦にというのである。
「だから明日じゃ」
「明日ですな」
「兵達に飲ませますか」
「そうするのじゃ」
今日ではなく、というのだ。このことも言う信長だった。
「明日じゃ、そうしてな」
「明日にはですな」
「城が」
「完成する」
まさにそうした状況だ、城はまさに明日完成する。そして氏康もそのことがわかっているからなのである。
それでだ、こう言うのだ。
「よいな」
「はい、では」
「今宵退けましょう」
「さて、北条氏康か」
信長は今度は氏康のことについても言った。
「あの者と戦うとはな」
「人の世はわからない」
「そう仰るのですな」
「やがてと思ったが思ったより早い」
北条、ひいては氏康自身との戦がというのだ。
「天下の動きもな」
「それは殿のお動きが早いせいです」
兼続がその信長に言う。
「ですから」
「だからか」
「はい、天下の動きも早く」
「そしてじゃな」
「北条家との戦も殿が思われていたより早かったのです」
「ここで北条を倒せば関東も収めることになる」
織田家がだ、そうしたことになるからだった。
「甲信、北陸に続いてな」
「関東もですな」
「西は本州と四国は抑えた」
九州以外はだ、織田家は毛利を降し伊予の豪族達がなびいたことで西国のかなりの国を手中に収めたのだ。
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