第二百三話 蛟龍と獅子その三
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「時を見て」
「わし自ら出てじゃ」
そして、というのだ。
「そのうえでな」
「あの城を焼きますか」
「指を咥えて見ていては北条の名折れ」
それ故にというのだ。
「だからな」
「あの城を攻めてですか」
「焼いて何年も囲む様な状況にはさせぬ」
「若しそれを何もせず許したならば」
「北条の恥じゃ」
そしてその恥が、というのだ。
「当家を天下に侮らせてな」
「滅ぼしますか」
「だからじゃ、必ず攻めてじゃ」
そうしてとだ、氏康は氏政にも言うのだった。
「あの城をな」
「攻め落としますか」
「そうする」
こう言ってだ、氏康はその夜襲の時を待っていた。そして城が明日にでも完成するとい時になって遂にだった。
城の家臣達をだ、集めてこう言った。
「ではな」
「はい、それでは」
「いよいよ」
「あの城を攻める」
信長が築いている城をというのだ。
「よいな」
「はい、さすれば」
「今夜にですな」
「城からうって出て」
「そのうえで」
「あの城を焼く」
そうするというのだ。
「わかったな」
「では殿」
綱成が氏康に言うことはというと。
「夜襲ですので」
「同士討ちに気をつけてじゃな」
「攻めねばなりませんが」
「安心せよ、我等の服の色は白じゃな」
「具足も陣笠も旗も」
「夜の中の白じゃ」
それ故にというのだ。
「目立つ、それでな」
「敵か味方かわかるので」
「同士討ちになることはない」
その白の服や具足故にというのだ。
「そのことは安心せよ」
「さすれば」
「敵は全て斬れ」
つまり白の具足や旗でない者達はというのだ。
「よいな」
「畏まりました」
「では今宵は早いうちに飯を食いじゃ」
その飯で英気を養い力をつけて、というのである。
「そのうえでな」
「城を攻めますな」
「そして焼くぞ」
その城をとだ、あくまで言う氏康だった。
「よいな」
「ではお家の為に」
「この戦は」
「果たす」
無事にというのだ、こう言ってだった。
氏康は家臣達にも兵達にも早いうちに飯を食わせた、それは飯を炊く煙を出して織田家に早いうちの飯から夜襲を悟られない為に干し飯等だった。だが。
櫓の兵達が早いうちから飯を食っているのを見てだ、信長は言った。
「今夜じゃな」
「来ますか」
「敵が」
「うむ、来る」
こう幸村と兼続に言うのだった。
「間違いなくな」
「そういえば櫓の兵達が」
「もうですな」
二人もここで気付いたのだった。
「飯を食っていますな」
「干し飯等の様ですが」
「何故早いうちに飯を食うか」
二人も言う。
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