第二百三話 蛟龍と獅子その二
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「韮山城は大丈夫じゃな」
「助五郎様の守っておられる」
「あの城なら」
「うむ、守られる」
あの城ならというのだ。
「助五郎ならやってくれる」
「韮山城をですか」
「守ってくれますか」
「あの方ならば」
「うむ、あの城にな」
それにと言う氏康だった。
「忍城も大丈夫じゃ」
「あの城もですか」
「大丈夫ですか」
「あの城におるのは傑物じゃ」
氏康は確かな声で笑って言ったのだった。
「だからな」
「忍城といえば」
綱成が言う名はというと。
「成田氏長殿ですな」
「それにじゃ」
「それにとは」
「もう一人おるからな」
「いえ、確か成田殿には」
綱成は氏康の今の言葉の意味はわからずこう言った。
「ご子息はおられず。一門の方にも」
「あの者程の武の者はおらぬというのじゃな」
「はい」
そうだというのだ。
「あの方程の武の者は」
「いや、もう一人おる」
それでも言う氏康だった。
「あの家はな」
「そうなのですか」
「その者がおるからな」
だからだというのだ。
「あの城も大丈夫じゃ」
「左様ですか」
「この二つの城は大丈夫じゃが」
逆に言えばだった、このことは。
「他の城はな」
「では織田が支城を攻め落としていけば」
また家臣の一人が言う。
「それで」
「うむ、北条の守りが破られたことになる」
「まさにですな」
「そして実際に力も失われていく」
城を落とされその城から治めている領地も織田に奪われてだ、その都度力を奪われていっていくというのである。
「確実にな」
「それでは」
「あくまで我等の目的は家を守る為」
「北条の家を守る為」
「その為の戦だからじゃ」
それ故にというのだ。
「滅ぶつもりはない」
「では滅びぬ為にも」
「支城を守る者達にも伝えた」
「城を枕に討ち死にするよりはですか」
「降れとな」
そうして、というのだ。
「死ぬなとな」
「生き延びよ、ですか」
「その様に」
「織田家は無用な血を求めぬ」
このことは天下の誰もが知っている、信長は降った者はそこからおかしなことをしない限りは織田家に加えるのだ。そうして大きくなってきたのだ。
「だからな」
「降り、ですな」
「死ぬなというのですか」
「支城の者達にも」
「そう告げられたのですか」
「そうじゃ、しかし意地は見せる」
それはというのだ。
「我が家のそれはな」
「では父上」
嫡男の氏政が言って来た、彼もまた。
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