第二百三話 蛟龍と獅子その一
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第二百三話 蛟龍と獅子
氏康は信長の築城を小田原から見ていた、そのうえで周りにいる家臣達に対して険しい顔でこう言った。
「思ったよりもな」
「築城が速いですな」
「随分と」
「しかも理に適っておる」
ただ速いだけでなく、というのだ。
「見事な築城じゃ」
「確かに、築いている最中ですが」
「それでもですな」
家臣達も氏康に応えその築城を見て言った。
「よい築城です」
「織田信長は築城にも秀でていると聞いていましたが」
「実際にですな」
「よい築城です」
「見事なものです」
「あの城を築かれたなら」
そうなればとも言うのだった。
「攻め落とすことは簡単ではない」
「だからこそ、ですな」
「今のうちにですな」
「城が完成する前に」
「その前に」
「うむ、攻め落とす」
そうすると言うのだった。
「築かれる前にな」
「では」
「頃合を見て」
「夜襲を仕掛ける」
氏康は城の攻め方についてだ、家臣達に簡潔に答えた。そのうえで北条綱成を見てこう言ったのだった。
「御主には期待しておる」
「それでは」
「思う存分戦いじゃ」
「そして、ですな」
「あの城を潰そうぞ」
「火をつけますか」
「そのつもりじゃ」
綱成に対してだ、氏康は強い声で答えた。
「そして城を焼いてな」
「織田の考えをくじきますか」
「城を築かれては危うい」
そこを足掛かりに何年も囲まれてはというのだ。
「只でさえ各地の城に織田の兵が向かっておるのじゃ」
「その数十五万」
松田憲秀が言って来た。
「多いですな」
「うむ、小田原だけで守ってはおらぬ」
北条家はだ、その領地をというのだ。
「それぞれの城が支え合ってじゃからな」
「守っているが故に」
「武田や北条も支城達を攻め落とすさけの余力はなかった」
小田原城を囲むだけで精一杯だったのだ、それで彼等はやがて囲みを解いて自分達の領地に帰るしかなかったのだ。
だが、だ。信長はだ。
「しかし織田は二十万」
「そのうちの十五万を使い」
「まずは支城を攻めてきておる」
「では」
「支城がどれだけ頑張れるか」
それが、というのだ。
「大事じゃが」
「どうなるでしょうか」
「危ういな」
もっと言えば殆どの城が落ちると思っている、しかし氏康は家臣達の士気が己の発言で落ちることを考えこの程度で止めたのだ。
「やはりな」
「左様ですか」
「うむ、命を粗末にすることは止めておるしな」
そこまでして戦うこともというのだ。
「だからな」
「それではですな」
「そうじゃ、どの城も危ういが」
ここでだ、氏康はこの城の名前を出した。
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