第陸話『今朝の喧嘩、その後』
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晩飯どうする?」
「ん?ああ、ユウん家で食べるって母さんに言ってある」
最初っからその気満々で来てたのね、まあ、いいけど。
「なんかリクエストある?」
「いや、ユウが作るのなら何でもいい。何作っても家の母さんより美味いし」
「りょーかい」
そんじゃあ、カレー(肉増量)にでもしますか、マキも後で来るだろうし。
まずは、ご飯を炊いてその次は、肉、人参、ジャガイモ、タマネギを切るか。
―――トントントントン
「ユウ、何で左で包丁使ってるんだ?」
「ん?ああ、別に意味は無いよ。ただ、何となく今日は左で包丁を使いたいんだ」
まあ、実際は今朝の一件で右手首を痛めて正直野菜を支えているだけでもかなり痛い。
全ての材料を切り終わり、鍋に入れて火を入れる。良い具合に野菜が柔らかくなってきたらルーを投入。そして、ルーが溶けたら火を弱くしてしばらく煮込む。
「ほい、完了」
リビングに戻ってソファに座る。もちろん、愛には痛めている事を悟らせないために平然とした顔をしておく。
「じ〜……」
「ど、どうしたんだ?愛?さっきからじ〜っとこっちを見て…」
「ユウ、ちょっと、右手貸してみ」
「……はい?」
「いいからっ」
「え――ちょっ――痛っつ!?」
愛に半ば無理矢理右手を引っ張られた。痛めているので当然触られただけで痛い。
「……やっぱり、痛めてたのか。いつから?」
「えっと、朝のあの喧嘩から…」
「………そうか、どうりで今日一日右手をほとんど使わなかったわけだ」
「え!?気づいてたのか?いつから」
「実際、あの時すぐに痛めたんじゃないかって思ってた。まあ、今日一日のお前の行動を見ていたら、ノートとか取るとき全部左で書いていたし」
「よく見てるなぁ、お前…」
「べ、別にそんなんじゃねーよ。ただ、お前が怪我したのは元々アタシのせいだし、他に怪我したとこがないか見てたらたまたま分かったってだけだし…」
「……そうか」
「な、なんだよ、そのニヤけた顔はっ。いいから、包帯の置いてあるところ教えやがれっ」
「はいはい、そこの棚の上だ」
救急箱を取って戻ってくる。
「ほら、もう一回右手出せ。包帯で固定するだけでも違うぞ」
「おう」
シュルシュルと包帯を丁寧に巻いてくれる。そんな、愛の姿を見ながらやっぱり、愛って綺麗だよなと再確認した夜だった。
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