明日への翼
03 ……AFTER〜 天上界にて
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玉座に座る大天界長ティールが二人を見下ろしていた。
螢一が身に着けているのは、白を基調として金糸銀糸を織り込んだ神衣である。照れくさそうに笑っていた。
ベルダンディーは、女神服=天衣、女神の正装を身に纏って、まるで新妻のように彼に寄り添っていた。
「さてと、螢一君、君はまだ神属としての登録が済んでいない。まずはベルダンディーについて管理センターに向かってくれ」
「わかりました」
螢一は静かに頭を下げた。
「では──話は以上だ。ベルダンディー、彼を頼むぞ」
「はいっ、ありがとうございますっ」
ちょっと意外なほどの大きな声で、嬉しそうに返事をすると、丁寧に頭を下げてから螢一の手を取った。
「行きましょう!」
手を引かれて謁見室を出て行く螢一。
両開きの巨大な扉を抜けると、四車線道路と同じぐらいの幅の廊下がまっすぐに延びていた。左右の壁と天井を飾る彫刻がこの通路が何であるかを示している。二百メートルぐらい先は通路の形に光が溢れていてよくわからない。
んふふっ。
ベルダンディーは、嬉しくて仕方ないって感じで、螢一の腕に両腕を絡めていた。頬が桜色に染まっている。
身体も心もフワフワと……大天界長との謁見室への通路は飛ぶことも走ることも許されていないので、さすがに飛ばなかったけれど……ともかく、幸せで嬉しくて楽しくて鼓動が踊り出していた。
螢一が死んだ時本当に哀しかった。たとえようのない喪失感と無力感。いっそ封環を外して持てる力のすべてを使い、螢一を生き返らせようか。そこまで考え思い詰めた。
だけど出来なかった。失われた命を現世に戻すのは女神としての最大の禁忌だから。
生き返らせることは出来ても、自分は天上界に呼び戻され処罰を受けるだろう。女神の資格を剥奪され二度と地上界に降りることは許されない。
二度と螢一に逢えなくなる。
ならばこのまま世の理に従って彼を見送ろう。
いつか──それがどれほど先になるのか、女神である彼女にもわからなかったけれど、またいつか螢一と同じ魂を持つ者に巡り逢える。
彼とも約束をした。
また会えるから……また会いたいから、きっと顔も名前も違うけど、今の記憶もないけれど、でも、魂だけは……同じだから、だから泣かないで。
泣かない約束は果たせなかったけれど、でも、こんなに早く、こんなにも嬉しい形で再会できるなんて。
もう二度と離さない、離れない。
ずっと、ずっと一緒。
ゆっくりと歩いていく二人は、まるで結婚式場のひな壇に向かう新郎新婦のようだった。
螢一としてもまだ少なからず混乱していた。
死を迎えて遠くなる意識。
くもの糸のようなか細い意識の中で、ただひたすらにもう一度ベルダンディーに逢いたいと願った。
大きくて優しい光が自分を包み込み、
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