明日への翼
03 ……AFTER〜 天上界にて
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ディーは静かに眼を閉じると深い眠りの中に落ちていった。
時が流れていく。
「大聖堂」での結婚式は荘厳で豪華なものだった。
「大聖堂」そのものがモビルスーツサイズ、巨人サイズなのだ。クリスタルとダイヤモンドのグラス。燭台。ステンドグラスかと思われる窓はガラスではなく宝石だ。象牙、大理石、プラチナ、金、銀、オリハルコン。ありとあらゆる貴金属と宝石で飾られた調度。値段など想像もつかない絨毯。
大勢の神属と天上界の評議会のメンバーと大天界長、その妻の女神──ベルダンディーとスクルドの実母だ──が見守る中、大魔界長ヒルドの姿もあった。
──誓いの口づけ。
紋章へのそれを交わした後はあまりよく憶えていなかった。
ただめぐるましく時間が過ぎていった。
気がつくと、「現在の館」の一室で、二人、ソファに並んで腰掛けていた。傍らのベビーベッドでは二人の赤ちゃん、アイリンがすやすやと寝息をたてていた。
螢一の肩にベルダンディーがそっと頭を乗せている。
二人ともくつろいだ室内着姿だ。
「さすがに今日は疲れちゃったね」
「……ですね、でも……幸せです。今日、私の夢が叶いました」
螢一の手に重なった手。
強く、優しく力が入っていた。
「私はこれからずっと螢一さんの妻です」
離さないでくださいね。あなた。
もちろんさ。
子育てとユグドラシルの勤務。
螢一は、慌しい日々の中で、確実に実績を積み上げていった。
彼の改善案の実行で、ユグドラシルの稼働率が三パーセント上昇し、バグ発生率が二パーセント下がった。
これは大きな評価につながった。
また時が流れて……
「ノルンの未来の館」
スクルドの長い黒髪と天衣が風に揺れる。
「じゃあ行って来るねっ」
一級神を拝命して初めてのユグドラシルへの出勤日。
ベルダンディーは、天へ浮き上がった妹に軽く手を振った。
「行ってらっしゃい」
傍らには愛娘のアイリンがいる。
歳の頃なら六歳ぐらいか。艶やかな黒髪を赤いリボンでツインテールに纏めていた。
「スクルド姉様大丈夫かしら」
「そうね、これからたくさんの困難が待っているかもしれないけれど、大丈夫よ。あの娘は私の妹ですもの」
スクルドが長い間待ち望んでいた「時間」が訪れようとしていた。
「お助け女神事務所」の自分の席で電話が掛かって来るのを待っている。
長かった。
仙太郎。
やっと逢える。
募る想いで胸が張り裂けそうだった。
一秒、一秒が鉛のように重く、遅く感じられる。
やがて目の前の電話のベルが鳴った。
逸る心を押し殺して深呼吸。
受話器に手を伸ばした。
「はい、こちら「お助け女神事務所」です。ご用件はそちらで伺います」
……AF
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