明日への翼
03 ……AFTER〜 天上界にて
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女神が嘘はよくありませんよ」
「仙太郎は……ただの友達よ……それだけ」
俯いて唇を噛んでいた。
風に黒髪が流れている。
ベルダンディーの手がそっとスクルドの肩に掛かった。
「……想いは捨て去るものではないわ。あなたには夢があるのでしょう」
弾かれたようにスクルドは顔を上げた。
諦めてしまえば総てそこでおしまい。何も生まれず何も変わらないままだ。
「お姉さま」
「なあに?」
「螢一が神属になっていなかったら、お姉さまはどうしてた?」
「女神の仕事を続けながら探していたわ。ずっとね。もちろん、顔も名前も違う、記憶もないでしょうね。でも、魂に刻んだ記憶だけは永遠ですから」
「でも……」
「そうね、それはきっと、螢一さんが神属になるよりもずっと難しいこと……だけど私は諦めないわ。たとえ百億の時が過ぎて千億の星が巡っても」
スクルドは肩に掛かるベルダンディーの手を両手に取った。
強い決意の瞳。
「あたしも頑張るっ」
もう一度、大好きな人と逢うために。
乙女の恋心は強いのよっ。
背を向けて館の中に駆けていった。
天上界の時間で四ヶ月が過ぎた。
この間、ベルダンディーは週に一度は「ミースの館」に訪れて螢一との逢瀬を重ねた。時間としては短いものだったけれど、二人には時間の長さなどあまり意味を成さなかった。
「ユグドラシル」の一角に「女神モール」と呼ばれる買い物街がある。
本当に必要なら自分で作り出せてしまう神属にとって「買い物」とはリクレーションのひとつだ。神属だってストレスは溜まる。遊びやリクレーションは常に必要だ。
あえて「女神モール」と名前が付いているのは、客層のほとんどが女神達だからだ。
螢一は、二級神への昇格試験を明日に控えたある日、初めて「ミース」から休みを貰った。
すぐにでも「ノルンの館」に跳んで行こうかと思ったのだが、師匠である「ミース」に耳打ちされて気を変えた。
てなわけで三姉妹へのプレゼントを物色しつつ散策中なんだけど。
周りの女神たちの視線が妙に痛いのは気のせいだろう。
ね、「彼」よ。
ああ、ベルダンディーの。
そうそう、なんでもミースが付きっ切りで指導しているみたいよ。
ほんとに?でも、彼は見込みのない者はどんどん切り捨てる主義なんじゃ?
なのよー、だから、今は三級神でも将来大化けするかもよ。
よく見ると可愛い顔してるわね。
よしなさいよ。あんたとベルダンディーとじゃぜんぜん勝負にならないわ。
螢一がショーウインドウを飾るドレスを見ていると、後から声を掛けてくる者がいた。
「や、やあ。ペイオース」
「お久しぶりですわね、螢一さん──あっと」
螢一の天上界での真名は フレイム(フレーム)炎=車体の骨格を構成する部
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