明日への翼
03 ……AFTER〜 天上界にて
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何かを抜け出るような感覚の後。意識が消失した。
眼を覚ました時、そこは見知らぬ場所だった。
部屋の中央に覚えのない衣服を着て立っていた。
建築の様式に精通していればそれがどんな様式なのか説明できるのだろうが、あいにくと螢一は知識が乏しいのでよくわからなかった。洋風の簡素な部屋。しかしながら十分お金がかかっていて、簡素な作りにしたおかげで部屋に風格のようなものが感じられた。左手の壁には観音開きのどっしりとした木製の扉。背後の壁には一面にたくさんの天使が舞い踊る絵が直接描かれていた。右手は大きな窓で白いカーテンが流れ込んでくる風にゆっくりと動いている。まるで部屋が呼吸をしているようだ。
正面の一段高くなったところに豪華な装飾をされた椅子が置かれていて、男性が一人座っていた。どこにでもいるけど、どこにもいない。そんな感じの風貌だ。
神属になったばかりでも、彼が誰で、ここがどこであるのか瞬時に理解できた。
慌てて床に膝を突いて頭を垂れた。
理解はできたが、信じられなかった。
いまだ人間としての常識、感覚にとらわれているようだ。
ともあれ、二人は互いに思いもよらない形で再開を果たせたわけだ。
互いがどんなに大切な存在か。
大切な人がそばにいること。
それがどんなに幸せでどんなに嬉しいことなのか。
幸せなんて他に何にもなくてもそれで充分。
二人はよく知っている。
通路が切れると円形の巨大なホールに出た。
直径は百メートルぐらいか。天上はドーム状になっていてかなり高い。
中央に大きな池があり、中心に身長が三メートルぐらいある純白の天使の像があった。身体を天に向けて反らし、豊かな胸をはって五メートル以上もある両翼を誇らしげに広げていた。ホールの形に添って湾曲した形のベンチが、座ると天使の像を向くように設置されていた。周囲には植木がバランスよく配置されている。
閑散としていて数名の神属が談笑をかわしていた。
ベルダンディーは螢一の腕を離さないまま。
「ここは神様の謁見を賜る時、待機するところなんです」
謁見室への通路に対して正面にゲートがひとつ、中心にして左右に二つずつ、合計五つのゲートがあった。どのゲートの枠も金銀と白のリレーフで装飾されている。
こっちですよ。
導かれて左端のゲートの前に空を滑る。
女神様に助けてもらっているのではなく、自分の力で浮かび飛んでいるのが理解できた。それがあまりにもあたり前のように出来ることに、螢一自身驚いていた。
ゲートの枠の内側は水銀の海のようだ。
「ここから管理局に行けますっ」
腕を引かれて身体を中に入れた。
一瞬の浮遊感の後、どっとばかりの喧騒。
明るいフロア。
カウンターに座るオペレーターに向けて長蛇の列だ。
「神様っ
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