つぐない
とあるβテスター、嗚咽する
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で引き当てるくらいなら、同じ確率の武器強化を連続で成功させてほしいものだよ、まったく……。
「あー……だりぃ。あの時計野郎、すっげぇめんどくせぇのな」
げんなりとした様子で床に腰を下ろすリリア。僕とシェイリもそれに倣い、白い壁を背にして並んで座った。
「まさか連続で呼ばれるとはね……。さすがに、あれを捌き切るのは無理かな……」
いくら見た目がアレだとはいえ、その戦闘能力自体は立派な最前線のモンスターだ。
不運にも二度目の増援は一体ではなかったし、あと少し逃げ遅れていたら危なかっただろう。
正直なところ、全員揃って安全エリアに逃げ込むまでの間、生きた心地がしなかった。
「ユノくん、大丈夫ー?」
僕の様子をいたたまれなく思ってか、隣に座るシェイリが顔を覗き込んでくる。
僕がよっぽど酷い顔をしていたのか、彼女のくりっとした瞳には、心配そうな色が浮かんでいた。
「ん、大丈夫だよ。ありがとね」
そう言って頭を撫でてやると、シェイリは嬉しそうに目を細めた。
そんな相方の顔を見ているうち、僕の心もいくらか落ち着きを取り戻してくる。
普通に考えれば、一人で新手の相手をしていたシェイリのほうが、精神的には消耗しているはずなんだけど……日頃から超マイペースであるが故か、特別堪えた様子はないようだった。
想定外の事態になると慌ててしまう僕としては、彼女のそんなところが少し羨ましかったりする。
「しっかしクソみたいな迷宮区だな、畜生。さっさと次の層に移りてぇ」
「まあ、あと少しの辛抱だよ。 ……多分」
愚痴るリリアを宥めつつ、現在の攻略状況を頭に思い浮かべた。
アルゴの情報によれば、この第21層迷宮区の攻略は、既に2/3ほどが完了しているという。
これは攻略組最大手ギルド《アインクラッド解放同盟》───通称《ユニオン》を取り仕切るディアベルから齎された情報であるため、まず間違いないと見ていいそうだ。
いくら面倒なフロアであれ、残すところ1/3ともなれば、ボス部屋が見つかるのも時間の問題だろう。
最近の攻略ペースを鑑みれば、あと数日もあれば見つかるはずだ。そう思えるほどに、ここ数ヶ月の攻略のペースは早い。
一時は絶望視されていた攻略がここまで順調になったのは、一重に《ユニオン》の存在によるところが大きいだろう。
SAO最大規模を誇るギルドが率先してボス攻略に赴くことで、攻略組全体の士気が上がってきており、多くのプレイヤーが攻略に対し、「なんとかなる」ひいては「いつかクリアできる」と思えるようになっていた。
また、《ユニオン》を率いるディアベルの人柄に惹かれてか、彼らの本拠地である『はじまりの街』に身を置く者達を中心に、新規加入希望のプレイヤーが後を絶たないらしい。
総員は既に数百名に上り、このまま規模を拡大
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