つぐない
とあるβテスター、嗚咽する
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縦にも横にも幅の広い大型のシルエットは、そこまで広くもない通路を一直線に、脇目もふらずにこちらの部屋へと向かってくる。間違いなく、目の前の時計怪人が呼び寄せた増援の姿だ。
そして、それが姿を現したのは───
「──右から一体だッ!!」
索敵スキルを解除し、それぞれの扉の脇に立って戦闘に備えてしていた二人へ向けて叫んだ。
同時に左肩を大きく振りかぶり、明るい赤紫色のライトエフェクトを纏わせたチャクラムを右の扉に向けて投擲する。
システムのモーション・アシストによる理想的なフォームで投擲されたチャクラムは、上半身の捻り戻しによるパワーが加わり、本来であれば人の手による投擲ではまず有り得ないであろう推力を以って宙を突き進む。
空間を水平に切り裂くかのように舞う円月輪が向かった先には、今まさに鋼鉄の扉を押し上げ、戦闘に乱入せんとしていた時計頭の怪人の姿───
「よしっ!」
「さっすがユノくん!タイミングばっちりー!」
円月輪が狙いを違わず相手の時計盤へと吸い込まれていったのを確認し、僕は快哉を叫んだ。
そんな僕と入れ違いに、嬉々としたソプラノボイスを響かせながら跳躍したシェイリの斧が、体勢を崩した怪人の筋肉質な肩口へと振り下ろされる。
部屋に入るなり出鼻を挫かれた時計怪人は、自慢の筋肉を傷付けたシェイリに憎々しげな視線を向け、絶対に許さないとばかりに時計盤の針を目まぐるしく回転させた。
どうもこのモンスターの筋肉に対する思い入れには、並々ならぬものがあるらしい。
弱点部位である時計盤に攻撃を当てた時よりも、筋肉を傷付けた時のほうがヘイト蓄積値が高かったりする。
……このモンスターをデザインしたクリエイターは、一体何を思ってこんな設定にしたんだろう。
筋肉に対する謎の拘りを持ったAIといい、どこからどう見ても変態にしか見えないデザインといい……徹夜明けのノリで生み出されたモンスターか何かなんだろうか。
流石にこれをデザインしたのは茅場晶彦ではないと信じたい。普通ならモンスターグラフィックを担当したクリエイターが生みの親になるんだろうけど、もしもそれが茅場晶彦だったとしたら、なんというか……色々と台無しだよ!
「今だよ、リリア!」
「わーってる!」
まあ、この怪人を生み出したクリエイターのセンス云々は置いといて。
シェイリが新手を引き付けているうちに、僕とリリアは最初に戦っていた個体───今も床に蹲り、ベルを鳴らし続ける怪人を倒しにかかった。
「さっきからジリジリうるっせーんだよ!この腐れ時計がァッ!!」
君も十分うるさいよと突っ込みたくなるのを何とか堪え、僕も攻撃を開始する。
これ以上の増援を呼ばれる前に倒してしまいたいので、投擲してから手元に戻るまで時間の掛かるチャクラムは使わず、両脇のホルス
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