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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、嗚咽する
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・クロックマン》に囲まれてしまうこととなる。
そうなってしまったが最後、この筋肉質の怪人に嬲られてパーティ全滅という事態を避けるためには、急いで敵のいない通路に逃げ込むか、転移結晶で離脱しなければならない。
各個撃破で突破しようにも、《ファイティング・クロックマン》のHPはやたらと高く設定されており、数体に囲まれた状態から態勢を立て直すのは至難の業だ。

この増援を止めるには、床に蹲ったままベルを鳴らし続ける《ファイティング・クロックマン》を倒せばいい。
この個体は先の戦闘によってHPが減っている上に、攻撃してきたプレイヤーに反撃することもない。
攻撃を受けようが瀕死になろうが一心不乱にベルを鳴らし続けるだけなので、プレイヤー側に火力さえあれば押し切ることも難しくはない。
ただし、音の発生ポイントに真っ直ぐに向かってくる増援モンスターが、自慢の脚力でこちらへと到着するよりも速く、という条件が付いてしまうのがネックとなっている。

パーティの枠が六人全員分埋まっているならともかく、この時計怪人たちとの乱戦を戦い抜くには、僕たち三人だけでは少々力不足といったところだ。
したがって僕たちは、戦闘中にアラームを鳴らされたら即刻相手と距離を取り、索敵スキルで周囲を警戒。駆け付けた増援が一体だけなら戦闘を続行し、それ以上の時には撤退するという戦法を取るようにしていた。
このアラーム音は周囲からプレイヤーの姿がなくなった時点で止まり、駆け付けた増援たちも思い思いの方向へと散っていく。
なので、例え僕たちが戦闘を放棄して逃げ出したとしても、それまで戦っていた部屋がMH《モンスターハウス》になって他のプレイヤーに迷惑がかかる……といった心配もない。

───どっちから来る……?

通路からこの部屋へと繋がる入口は三箇所。つまり僕が背にしている壁以外の全ての位置に、敵の侵入経路があるということになる。
うち一箇所───正面に位置する扉は、僕たちが入って来た入口だ。途中の通路で遭遇した時計怪人は全て倒してきたため、ここから増援が侵入してくるという可能性は除外していいだろう。

つまり敵が入ってくるとすれば、壁を背にして立った僕から見て右側と左側に位置する扉───もしくは、その両方から。

左手に持ったチャクラムの持ち手を握り締め、左右の扉へ交互に目を走らせる。
アラーム音が鳴り始めてから十数秒といったところだった。このどちらかの扉から増援が現れるまで、もう間もなくだろう。

「っ!」
と、その時。暗緑色に染まる視界の中に、ぼやけたシルエットが映ったのを確認した。
この暗緑色の視界の中では、壁や扉といった障害物で阻まれた位置にいる敵の姿は、ぼんやりとしたシルエットとして表示されるようになっている。
一般的な成人男性のそれと比べて
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