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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、嗚咽する
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「オラァッ!死にやがれクソがッ!!」

相変わらず騒々しい掛け声(というより、もはや罵声だ)と共に、リリアが敵の脳天目掛けて斧槍を振り下ろす。
対象は、鋭い鉤爪の付いた両手と、ボディビルダーのように筋肉質な体躯を持つ人型モンスター。
その太く逞しい首の上、人間であれば頭部に当たる部位にアナログ式の巨大な目覚まし時計を乗せた異形の怪人《ファイティング・クロックマン》だ。

時計盤の「10」と「2」の数字にあたる位置が空洞になっており、その奥からは人間のものと思われる、黄色く濁った双眸が覗いていた。
盤上では針の動きによって喜怒哀楽を顔を表現しているのか、僕たちから攻撃を受ける度、時計の短針と長針がぐるぐるとせわしない動きを見せている。

……正直に言って、第17層で戦ったゾンビたちとは別の意味で気持ち悪い。怪人というより時計の被り物をした変態と呼んだほうがしっくりくる。
だってさぁ……これだけムキムキの身体で、履いてるのがビキニパンツ一枚なんだぜ……?どうみても変態だろ……?


そんな変態───もとい異形の怪人は、白銀のハルバードによる兜割りの直撃を受けると、まるで手負いの獣が咆哮するかの如く、目覚まし時計のベルからけたたましい音を放った。
その喧しさたるや、慣れている僕でさえうるさく感じるリリアの罵声、それすらも掻き消すほどの大音量で───って、まずい!

「二人とも、一旦離れて警戒だ!増援がくるよ!」
「了解、だよっ!」
「クッソ、めんどくせぇな畜生!」
異形の怪人との近接戦闘を繰り広げていた二人へ呼びかけ、僕自身もバックステップで後退。そのまま壁際まで下がり、硬質な壁を背にする形で部屋の端に立った。
リリアとシェイリが敵と距離を取ったのを確認してから、右手を振ってメニューウィンドウを開き、ショートカットから索敵スキルを発動する。
一瞬の間を置いた後、身体中の全神経が研ぎ澄まされる感覚。次いで視界に暗緑色のフィルターがかかり、鋼鉄の扉に阻まれた向こう側、即ち部屋の外に位置する敵の存在を感知できるようになる。

僕たちの戦っていた第21層迷宮区のモンスター《ファイティング・クロックマン》は、プレイヤーとの戦闘によって窮地に立たされた際、稀にこうしてけたたましいアラーム音を放つことがある。
その際、自身は一切の攻撃を中断し、そのままプレイヤーによって倒されるまで蹲り続け、まったくの無防備な状態となる。
だけど、プレイヤーにとって本当に厄介なのは、このベルの音だ。

このアラーム音は狼の遠吠え《ハウリング》の如く、近場にいる同種族モンスターを呼び寄せるという性質を持つ。
したがって、このモンスターとの戦闘中にベルを鳴らされた場合、こうして一旦距離を取って周囲を警戒しなければ、すぐさま増援の《ファイティング
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