明日への翼
02 BEYOND THE RAIN
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声を掛けてきた見覚えのない少女。
いや……違う。どこかで見たことがある。
何処だったか。
思い出せない。
「あ……そうか」
スクルドに似てるんだ。
そっくりってわけじゃないけど、どこか。
でも。なんでだろう。
馬鹿馬鹿しい。他人の空似だろ。
何か言ってたよな。
ひとつだけ願いが叶うとしたら。
ひとつだけ。
うん。
あるかもしれない。
もし本当に叶うなら。
でも、そんなことはないんだって、わかってるし。
ベッドの中で広げた小説は少しも頭の中に入ってこなかった。
翌日は日曜日。
昼近くまで思いっきり寝坊して、さてと、おなかがすいた。
外はまだ雨。
遠い雨音。
曇り空。
灰色の世界。
「出前でも取るかな」
いまさら作るのもめんどくさい。いや、作るのはいいのだけれど、片付けるのがめんどくさい。
不精の見本みたいなものだな。
キッチンの電話の子機。
自分で出前を取ったことはあまりないので、うろおぼえの電話番号をプッシュする。
呼び出し音。
……1回。
……2回。
3回目で相手が出た。
『はい、こちら「お助け女神事務所」です。ご用件はそちらで伺います』
「え?」
電話の声とともに、仙太郎が触りもしないのに、キッチンの水道のコックが全開になった。
迸る水飛沫。
空中で渦を巻く、人の背丈と同じぐらいに大きさになる。
中から一人の女の子が現れた。
年恰好は仙太郎と同じぐらいだから「女の子」では抗議が来るかもしれない。
腰まである長い黒髪。
桜色の唇。
真珠のような白い歯。
黒曜石の輝きの瞳。
ピンクと赤の天衣。
背の高さも仙太郎と同じぐらいになっていた。
額の「未来」の紋章。
「こんにちは。一級神二種非限定女神、スクルドです」
まるで彼女の登場が合図であったかのように、戸外の雨がやんだ。
雲に切れ間が走り、見ているうちに広がっていく。
太陽の光が世界に色彩を戻していった。
「あ……あ、あ……」
驚きに声も出ない。
「どうしたの?久しぶりなのにそれだけ?」
クスクスと笑う。
「驚いて声も出ないって感じね。あたしも驚いているよ。まさか初仕事の契約者が仙太郎だなんて」
私達って赤い糸で結ばれてたりして。
我に返ったように佇まいをなおした。
「いけない──どんな時も一級神としての矜持と品格を忘れずに──」
空中から名詞を取り出して差し出した。
「改めまして、一級神二種非限定女神スクルドです。天上界からあなたの願いを叶えに来ました。どんな願い事でもひとつだけ叶えて差し上げます」
「どんな願い事でも?」
「そうよっ、どんな願い事でも。ただしひとつだけね」
「願い事……」
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