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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
黒守黎慈とフェンサー(3) ─譲れないモノ─
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関係なく仕掛けてくる。到底敵わない化物を引き連れて。俺が彼女の都合を守らなければならない理由は? そんなものはどこにもない。

 次にもしも彼女と出会ったら?
 無防備な背中に刃でも突き刺せば……華奢な身体だ、果物ナイフ一本でも命を奪うに事足りる。それで一番の難敵と言えるバーサーカーは脱落するのだ。

 不意打ち、闇討ち、騙し討ち。
 昼間のイリヤは油断している、ただ勝利に拘るだけならどんな手段でも使えばいい。
 直接害するような方法を取らずとも、無警戒に俺からの大判焼きを口にするのだから、強烈な薬でも盛れば毒殺も篭絡も容易だろう。



 ────それをしないのは何故か。



 目的達成の為に手段を問わず、犠牲を厭わず。魔術師にはそういった考え方も多いが、あまり好ましいとは思えない。

 端的に言えば、黒守黎慈の矜持にそぐわないのだ。

 行動の是非はともかく、何を良しとするか否かは人それぞれ。
 俺はそういう行動を賛美出来る性格ではないし、自分を曲げてまで結果を獲りに行くようなことはできない。
 これは無くせない大切なモノであり、既に死んでいる英霊にだってあるはずの、守るべき一線であるはずだ。

 人々を救うことで讃えられた英霊に、救った数と同じだけ無実の人間を殺せば聖杯が手に入ると謳ったところで、絶対に実行することはない。

「もしまたイリヤに会っても、手は出さないよ。向こうが敵として現れたなら話は別だが、昼間に会うあの子はただの女の子だ」
「敵は敵でしょう。割り切りなさいよ……貴方は得意なはずだけど」
「殺すべき時が訪れたなら躊躇なく殺すが、それは俺が判断することだ。おまえだって納得出来ないことはしたくないだろ」
「ええそうね。その為にこそ令呪はあるんだけど……これ以上言ってもしょうがないわね」

 やれやれ、なんて仕草で備え付けのソファに座る。
 こんな何でもない仕草一つにさえ気品を感じるが、その優雅さも溜息と共に掻き消えた。

 俺とイリヤの雑談について、フェンサーにはバーサーカーへの対処として絶好の機会に思えるだろう。

 彼女でなくても、同じように考える奴は少なくないと思う。
 甘さだのワガママだのと言われればそれまでだが、それでも譲れない、曲げられないモノがある。

 同じモノがフェンサーにあるはずだということも理解しているつもりだ。

「先に言っておくが、フェンサー。おまえが嫌がることを令呪で強制する気は一切ないぞ」
「え?」
「俺の考えが不服かもしれないが、どうしても納得出来ないならとことん話し合おう。俺もおまえの行動指針に沿える事には従うし、異議あれば直接訴える。信頼ってのはそうやって築くものだろ?」
「……そうね、そういうものだけれど。随分殊勝な
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