第十五章 忘却の夢迷宮
プロローグ 再会は死の香りと共に
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「確かに、相棒たちのシゴキは半端じゃないが……」
「きゅいきゅい〜。でもでもなのね。いっつも逃げたり、じっと変な格好で固まってたりしてるだけなのねっ!!」
「それはそういう鍛錬なんだが……まあ、そう心配するな。あれでも下手な貴族の十倍はマシに鍛え上げてる」
くっくっく、と笑いながら部下たちの援護をしていると、視界の端に“虎街道”の入口の姿が見えてきた。
緩んでいた口元が硬く引き締められ、眼光が鋭く強くなる。士郎の言葉にそれでも不安や不満があるのだろう、シルフィードとぶつぶつ何やら話し合っているデルフリンガーを黙らせるようにその柄を強く握り締めた。
「……相棒」
「―――どうやら既に終わってるようだな」
「きゅいきゅい? 見えるの?」
シルフィードが長い首をぐるりと回し、士郎に顔を向ける。
「ああ。どうやら無事に撃退出来たよう―――」
士郎の言葉に喜びの声を上げたシルフィードは、更に速度を上げ主の元へと急ぐ。士郎はそんなシルフィードの様子にふっと吐息のような笑みを漏らすと、目の強化を解き
―――ッ!!
ゾクリと背筋に走った寒気に身体を強ばらせた。
「どうかしたのか相棒?」
敏感に士郎の反応を感じたデルフリンガーが訝しげな声に、カタカタと自身の意志とは別に細く震える指先を見下ろす士郎は何も答えない。
顔を上げた先、強化せずともハッキリとその姿を現した“虎街道”の入口を目にした士郎は、未だ震える身体を鼓舞するように小さく頭を振った。
「いや……何でも、ないさ」
目に掛けた強化を解いた際、視界に端に映った“あかい影”が唯の気のせいだと言うように……。
―――気のせいではなかった。
「………………」
衛宮士郎は固まっていた。
目の前に立つ存在を前に、飢えた捕食者を前にした被食者のように時が止まったかのように固まっている。しかし、良く良くその身体を見てみると細く震えていた。それこそ怯える子兎か子猫かというほどに……。
「………………………………」
「………………………………」
「「「「………………………………」」」」
無音であった。
誰も何も口にしない。
風さえも空気を読んだかのように先程から一陣も風が吹かず凪となって久しい。
―――っ。
最初に仕掛けたのは、やはり―――。
「お久しぶりですね―――衛宮君」
遠坂凛―――その人であった。
どこぞの深窓の令嬢の如く楚々とした上品な笑みを口元に浮かべながら、甘く優しい声音で愛を囁くように凛は士郎の名を呼んだ。
名ではなく―――苗字を。
ビクリッ! と大きく身体を震わせた士郎をチラリと見る
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