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SAO−銀ノ月−
第椅子取話 肆
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「ショウキくんにエギルさん……二人ともはぐれちゃった……」

 島に存在する木々そのものから襲撃を受けたプレイヤーたちは、ショウキやエギル、エミたちのチームたちも例外ではなかった。木々からの奇襲を受けた三人は散り散りになってしまい、エミはまだ攻撃して来ない林の中で胸をなで下ろした。しかし、それらもいつこちらを攻撃して来るかも分からず、エミは油断せずに片手剣と盾を構える。

 今はとにかく、木々たちに囲まれている場所から離れなければ――

「キャァァァァッ!」

「…………!」

 ――今聞こえてきた悲鳴から、そんな事はエミの頭から消え失せる。反射的にその悲鳴が聞こえてきた方に飛び出しながら、今の悲鳴が誰の声だったか頭の中で照合する。

「……リーファちゃん!」

 頭の中で照合が完了するのと、視界に樹木の枝に拘束されているリーファが入り込んで来たのは、ほとんど同時のことだった。既にリーファはボロボロだったらしく、樹木の拘束からは逃げられそうにはない。エミは片手剣を鞘にしまい込むと、盾で他の樹木の攻撃を防ぎつつ接近し、リーファに向かって懸命に手を伸ばす。

「リーファちゃん!」

「エミさ――」

 ……しかし、その手は繋がれることはなく。エミの手は空を切ると、リーファはそのまま樹木の中へ吸い込まれていく。中は光のない漆黒がどこまでも広がっており、どうなっているのかは想像もつかない。そしてリーファを吸収した樹木は、エミには目もくれずに逃亡していく。

「っ……許さない!」

 リーファの手を掴めなかった拳を強く握りしめ、片手剣を鞘から取り出すと、リーファを吸収した樹木を逃がすように立ちはだかる樹木に、エミの怒りを込めたソードスキル《スラント》が炸裂する。しかし樹木は何らダメージを受けた素振りを見せず、そのまま枝を鞭のようにしならせながら全方位からエミを襲撃する。

「くっ……」

 それらを器用に盾で防ぎながら、エミは後方の枝がまだ動いてないことを確認すると、周囲の木々から放たれる枝の鞭を弾いて少しずつ後退していく。心苦しいが、リーファを吸収した樹木はもう撤退してしまい、深追いは彼女の二の舞になるだけだ。反撃を考えなければ充分に防御も可能で、鞭の射程外まで行った瞬間に即座に後退する。

「ええい!」

 目指すは林から離れた海岸。走る間にも、思い出したかのように急に動き出す樹木たちの奇襲を盾で防ぎつつ、林からの脱出を計る彼女の耳に、見知った声が聞こえてきた。

『聞こえ――エミ――返事――』

「……マサキくんの声?」

 最初は途切れ途切れに聞こえるだけだったが、次第にその声は鮮明になっていく。脱出しながらも樹木の攻撃を防ぐエミに、途切れ途切れの言葉をゆっくりと聞いている暇はなかった
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