第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『交わる道』
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状態ではその程度の不安定すら、絶叫マシーン並みの恐怖をもたらして余りある。
彼女は思わず、その慎まし過ぎる胸ごと嚆矢の頭に手を回してしまった。
「イヤッホォォォウ! こいつァあ嬉しい誤算だ、元気百倍だぜェェェ!」
「こ、この変態〜〜っ!」
その事だけに、意識を集中する。鋭く走る痛みも、気にしなければ無いものと同じだと昔の偉い人が言ったとか言わないとか。
《いや、言わぬであろ》
(煩せェ黙ってろよ痛ェだろ)
背後に沸き立つ“悪心影”の突っ込みを切って捨てて。そんな事よりも。
兎も角、走り出す。幸いと言うか、彼が知る内で最高の名医である、あの『カエル顔の医師』の病院はこの近く。『駿馬』のルーンを起動している今、五分と掛かるまい。
「もっとしっかり掴まってな────少し急ぐからさ!」
風を斬って走る。魔術による身体強化の恩恵、余りの速度に何度か他の通行人に振り向かれたりしながら。しかし構ってなどやらずに。
途中、黒髪と茶髪、扇を持った三人組の常盤台の女学生を追い抜いて。何やら声を掛けられた気もしたが、それすら振り払って。
まるで、彼女の自虐を置き去りにするかのように。そんな男の顔を、腕の中から。まだ涙に霞んでいる瞳で見詰めながら。
「本当に…………貴男って方は」
呆れたような、諦めたような。そんな言葉を漏らしながら────微笑んだ黒子に、気付く事無く。
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