第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『交わる道』
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l Keeper』
の一文が表示された瞬間────バンを取り囲んだ警備員の一個小隊。『親指で押す』……即ち『警備員に通報』を行った飾利が呼んだ、警備員達が。
三人は絶句していた。その状況にではない。非殺傷のゴム弾が詰まったライフルを持つ多数の男性警備員になど、目もくれず。
「さあってと────久々に暴れられるみたいじゃん?」
「「「──────────」」」
目の前の車両から降りた、たった一人の警備員。桔梗色の髪を一房に纏めた、アクリル製の『楯』のみを持つ、女性警備員に────…………。
………………
…………
……
路地裏から歩み出た二人は、近場のベンチに腰を下ろす。そして嚆矢は自販機で買ってきたペットボトルの水を、目許をハンカチで押さえた黒子に差し出す。
負傷に加えて不甲斐なさで落ち込んでいるらしく、肩を落としている黒子の隣に座って。
「けほっ、こほ……面目次第もありませんの……」
「なぁに、悪いのは俺だ。判断誤った、御免な黒子ちゃん」
催涙ガスのせいで一時的に視力を失った彼女の肩をぽんぽんと叩きながら、努めて軽い口調で。見えはしないだろうが、頭を下げる。
幸い、強いガスではない。『治癒』の力を流し込んだこの水……ケルト神話に謳われる『フィオナ騎士団』の騎士団長フィン=マックールの伝承に準えた、その水で応急処置は十分だろう。
自分の腕は取り敢えず、『直す』事にした。この程度の脱臼、別に魔術を使うまでもない。押し込めばそれで終わりだ。早速、外れている肘から先を右手で掴み────脈や摩擦感を確認した後で、一息に。
「いいえ、わたくしの失態ですの。迂闊に迎撃などせずに、ちゃんと見てから対応していれば……初春に呼ばせた警備員の手を煩わせる事も」
「否々、どうせ捕まえたら警備員に引き渡すんだし。早いか遅いかの違いだけ────さッ!!」
ゴキリ、と鈍い音を立てながら引く。意識が飛びそうな痛みが走るが、この少女の前で呻いたり喚いたり、そんな無様は働けない。
だがしかし、目を洗っていた少女は僅かに空気が変わったのを感じたらしく。
「今、何か変な音がしましたけれど……」
「気のせい気のせい。それより、早めに手当てしないとな……さて、役得タイム!」
「ふあっ?! ちょっ、嚆矢先輩────っ!?」
それを誤魔化す為に、それ以上に早く病院に連れて行きたいが為に。直したばかりの腕も使い、所謂『お姫様抱っこ』状態で。
「ひっ────ひゃ!?」
見えずともどんな状態なのかは理解して、慌てて暴れかけた黒子だが……目が見えない
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