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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『交わる道』
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う。


『……最近の風紀委員は……南蛮渡来のような金髪がいるのか』


 その男……駒場利徳の姿を完璧に思い出す。今年の一月、どんな理由だったかは忘れたが────警備員(アンチスキル)黄泉川 愛穂(よみがわ まなほ)と共に制圧した、武装無能力者集団(スキルアウト)()()()の事を。


「……痛みを知らぬ者に、痛め付けられる気持ちは解らん……()()()()()()()()()()()()()を……しているだけだ」
「ハ、御大層な御託だな。けど、『気に入らねぇからブッ飛ばした』で十分だろうに。態々、自分を『偽悪』に仮託しなきゃいけねェンなら────端っから仲良しこよしの『偽善』なンてやってンじゃねェよ」
「『偽悪』に『偽善』か……間違いはない……だがそれは貴様にも返る言葉だろう……()()よ?」


 『同属』、と。その言葉に、心が凍る。有り体に言えば、つまり────


「ハ……()()()()()()()()を当たり前に持ってた癖に、社会からケツ捲って逃げ出したテメェらと一緒にしてンじゃねェよ────!」


 反吐が出るくらい、ムカついて。『左手』で握り締めた『兎脚の護符(ラビッツフット)』、励起するのは『灼光(シゲル)』と『軍神(テイワズ)』の二文字。どちらも『身体能力強化』を持つルーンだ。
 無論、その反動は『確率使い(エンカウンター)』により鋭い頭痛として顕れる。脳の一部を万力で搾ったかのような痛みが、理性を突き抜けて野性を呼び覚ます。


「……くっ……!」
「……ちィ……!」


 その魔術(オカルト)により均衡が崩れ掛かるも、利徳は腕の『発条包帯(ハードテーピング)』を起動して堪える。
 図らずも、こんな場所で科学と魔術が鬩ぎ合う。片方は大兵の、科学技術による身体強化。もう片方は些か見劣りはするが大柄の、文字魔術による身体強化。


「離さなければ……圧し折るぞ……南蛮渡来!」
「此方の科白(セリフ)だってェンだよォ、独活の大木がァ!」


 ミシリ、と軋むような嫌な音が。それは二人の肘から。どちらかが肘を曲げれば、確実に相手の肘が折れるだろう。
 不利なのは、どちらか。利き腕で大反動の『発条包帯(ハードテーピング)』を使う利徳か、或いは左腕で小反動の『神刻文字(ルーン)』を使う嚆矢か。


 そんな二人を、黒子はじっと見詰め────その視界の端に、一瞬だけ煌めくものが見えた。
 隣のビルの窓が、光を照り返した様子────に見せ掛けた『金属矢』が、嚆矢の首筋に向けて飛翔して。
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