五十一話: 選択する時
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もう、逃がさないにゃ!」
自分の愛するこの人を殺してしまうかもしれない。そう思うと、迫って来る球体を目の前にしても威力を上げることが出来なかった。そして、ルドガーの体は禍々しい光の中に消えていく。
「弱いな……俺は」
黒歌の攻撃を受け、骸殻も解けてボロボロになった状態でルドガーは膝をつき寂しそうにポツリと呟く。傷つけてでも守ろうとしていたにもかかわらず、彼は守れなかった。結局、彼女の心を傷つけただけで終わってしまった。その事に思わず自嘲してでた言葉だった。
「弱くても大丈夫」
不意に黒歌に抱きしめられて、ルドガーはその目を閉じる。どうしようもない落ち着きに自分が戻りたかった事を悟り、そのままルドガーの意識は闇へと落ちていった。
目を開けると以前に見たことがあるような天井があった。その事に自分がどうしてベッドの上に居るのかと思ったがズキズキと痛む体が考えるのを拒むのと同時に唐突に理解する。ああ……負けたのか、俺。結局、俺が一人でみんなを傷つけただけで終わったな。
情けないな……俺。そんなことを考えながら体を起こそうとすると自分の体が何かによって、しっかりと拘束されていることに気づく。その何かに目を向けると俺を責めるような金色の目と思いっきり目が合った。
「じーー」
「えっと……その、だ」
「じーー」
「ごめん……」
わざわざ、自分で効果音をつけながら俺をこれでもかとばかりにジト目で睨んでくる黒歌によって俺は抱き着かれていたのだ。豊満な胸が俺に押し当てられているが、俺は申し訳なさでそれどころじゃない。取りあえず、一言だけ謝るが黒歌の方は未だにジト目で俺を見つめてくるだけで許してくれる気配はない。
「取りあえず、動けないから離してくれると助かる」
「離したら、またどこかに行くかもしれないからダメにゃ」
放してくれと頼むが即答で返される。今更、どこかに逃げる気はないけど、前科があるからそう言っても信じてくれないか。俺はそう思って軽く息を吐いて別の願いを言う。
「じゃあ、腕だけでも動かせるようにしてくれないか?」
「……どうして?」
「君を抱きしめられない」
そう言うと黒歌は渋々といった感じで俺の腕だけを離してくれる。しかし、その耳はピコピコとせわしなく動いているため、喜んでいるのがまる分かりであった。俺はそのことに微笑みを浮かべながら黒歌を抱きしめる。そして、優しく口づけをする。
「……ずっと、黙っててごめん」
「それはいいにゃ。あんな過去……誰だって話したくないにゃ」
「それでも、ごめん」
直も謝り続ける俺に、寝ている状態では話しづらいと思ったのか黒歌が俺から離
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