五十一話: 選択する時
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ガーの心は揺らいでしまう。同時に、こわくても、つらくてもいっしょにがんばっていくというアイボーの言葉も思い出す。エルなら今の自分を見たらどうするだろうかと考える。やはり、彼と同じように自分と助け合おうとするだろうなとルドガーは確信する。
「……兄様。兄様は幸せになってくれといいましたよね?
……逆に兄様に聞きます、兄様は今―――幸せですか?」
小猫の言葉にルドガーは言葉が出なかった。ルドガーが今を幸せに感じているかどうか答えは否だ。かつてジュードに拳で語られたように大切な人と離ればなれになって平気なはずなどなかった。自分が今―――幸せなはずなどなかった。
「……自分を幸せに出来ない人が、誰かを幸せに出来るなんてことはないです。……兄様も分かっているんじゃないですか?」
「くっ……」
何も言い返せなかった。ルドガーもその考えには至っていた。ミラに教えて貰っていた。それにもかかわらず、自分の幸せを疎かにしていた。黒歌の幸せこそが自分の幸せだと言って自分を疎かにしていた。確かに彼にとっては黒歌の幸せこそが自分にとっての幸せであることには間違いがなかった。
だが、その中でも大切な人と一緒に居たいと、平穏な生活が送りたいと思わないということは無かった。己の兄も自分の幸せの為に全てを投げ捨ててくれたが、それでもルドガーと一緒に平穏な生活を送りたいという願いは持っていた。
「……兄様と一緒に居ることが私達の幸せです。……だから、帰ってきてください! 帰ってこないなら無理やりにでもついて行きます。一人になんてさせません!」
滅多に張り上げることのない声を張り上げて小猫が叫ぶ。その言葉にルドガーは悩んだ。彼等の幸せを優先するなら小猫の言うように自分が帰らなければならない。しかし、それでもなお、大切な者を失うという恐怖がルドガーを素直に動かさない。ルドガーはさらに自分が拒絶されるように叫ぶ。
「俺は! 俺は…っ! 百万もの世界を壊したんだぞ!? それでもいいのか!」
ルドガーは動揺の為にそんなことを叫ぶがその程度の言葉ではイッセー達の決意を止めることは出来なかった。アーシアが優しい声でルドガーに声を掛ける。
「全ては許されないかもしれません。でも償うことは出来ます。私は、ルドガーさんが幸せになることこそが償いだと思っています。それは、ルドガーさんも理解しているはずです」
ルドガーは理解していた、ミラの言葉を忘れてなどいない。アーシアの言う通りだということも分かっている。だが、素直になれない。ミラが握っていた手の暖かさや、ユリウスを殺した時の肉を貫く感触を忘れることのできない彼は素直になれない。
「私達にあなたの過去の罪を一緒に背負ってあげる事はできないわ
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