五十一話: 選択する時
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物音一つしない戦場でルドガーと黒歌達は黙って対峙し続ける。ルドガーは黒歌達に問いかけた、お前達はどう選択するのかと。ルドガーとしては自分を諦めるという選択をして欲しかった。これ以上、自分の大切な人間が失うのを見たくないという思いから彼は自分から仲間を引き離そうとした。尚且つ、こんな大量殺人者が彼等と一緒に居る資格はないとも心の奥底では思っている。そんな時、イッセーが口を開いた。
「……正直、お前の記憶を見てどっちも救うっていうのは無理なんじゃないかって考えたし。何かを守る為には必ず何かを犠牲にしなければならないんじゃないかってのも思った……」
「そうだ。何かを守る為には必ず何かを犠牲にする必要がある。だから、お前達は俺を犠牲にして幸せになってくれ」
俯きながらに話すイッセーに対してルドガーは上手くいきそうだと内心ホッとしながら自分を犠牲にしろと冷淡に告げる。こうすれば、彼等が傷つくことはもうないと思っていた。しかし、イッセーはそこで顔を上げて力強い目でルドガーを見つめ、言葉を続ける。
「だとしても、俺はみんなが幸せになれる道を選ぶ! そんな道がないならお前みたいに新しい選択を創り出す! 俺は絶対に―――お前を犠牲にしないっ!!」
そんな言葉にルドガーの表情は歪み、彼にとっては本当に珍しいことに怒りで顔を歪ませて、ただ、感情のままにイッセーを怒鳴りつける。
「ふざけるな! あれを見て、まだ、諦めなければ何でもできるなんて子供みたいな考えを持っているのか!?」
「あきらめなければ、なんでもできる。……本当は、そうじゃないことがあるってのもわかってる。でも……だからってやる前からあきらめたら何にも始まんねえだろ!」
ルドガーの怒鳴り声に負けることなく、イッセーは叫び返す。その言葉にルドガーは思わず、言い返す言葉を失う。諦めなければ何でもできるという事はこの世に存在しない。それはルドガー自身がその身をもって体験してきたことだ。
“ミラ”の手を離さないように諦めなかったが結局は彼女を失った。だが、イッセーの言うように、だからといってやる前から諦めれば出来た事すら出来ないのもまた事実だ。だとしても、彼は大切な者を失う事を認めない。彼は呼吸を整えてハッキリとした口調で相手の言葉を拒絶する。
「だとしても、傷つくのは俺一人で十分だ。俺の問題なんだから、俺一人が諦めずに立ち向かえばいいだけだ」
「なんでお前だけ辛い思いするんだよ! なんでお前だけ傷だらけになるんだよ! 友達ってのは苦しい時に助け合うもんなんだぞ…! 一緒に傷ついてやるもんなんだぞ!」
だが、ルドガーの拒絶の言葉はすぐに返されてしまう。かつての仲間達も恐らくは同じような言葉を自分にかけるだろうと思うとルド
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