八十四 追う者 追われる者
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…その情報源…、いや、続けてください」
一度口を挟みかけたものの、すぐに思い直して話を催促する。シカマルの視線に促され、綱手は言葉を続けた。
「……本来ならば上忍と中忍の四人小隊が受け持つ内容だが、この任務は失敗を前提とする。故に下忍のみの人員構成とする」
そこで一端、綱手は口を閉ざした。不意に朝の訪れを告げる鳥の囀りが聞こえ、ちらりと窓外へ眼をやる。
視界の端に捉えたのは、麗らかな陽射しに溢れる木ノ葉の里。重苦しい空気に満ちた室内に反して、外の世界は実に穏やかだ。
それが羨ましく思うと同時に、この平和の均衡を崩してはならぬと里長たる彼女は改めて顔を引き締めた。
「この任務は急を要する上、厄介な事になるだろう。何故ならお前はサスケを追うと共に、サスケを見逃すからだ」
里抜けを黙認すると暗に告げる火影を、シカマルはじっと見据えた。聡明な彼は言葉の数々から綱手の意向を論理的に推し量る。
まず、サスケが木ノ葉を抜けた事実を事前に知っている点。
次に、サスケと接触した大蛇丸の部下の正確な人数、果ては名前まで分かっている点。
そして、里抜けという大罪を犯すサスケを受け入れている点。
以上より、サスケは火影の命令にてわざと木ノ葉を抜けた可能性が高い。実際はサスケ本人の強い意志によるものだが、そこまでは流石のシカマルでも察知出来なかった。
しかしながら僅かな時間で、サスケは任務故里を抜けたのだと事情をすっかり把握したところはやはり見事だろう。
だからこそ話の矛盾に、「…だったら、」とシカマルは指摘した。
「最初から追う必要なんて無いんじゃないんスか」
「――それはできない」
実に的確な発言。だがシカマルの意見は、顔を顰めた綱手によって即却下される。
口を開きかけたシカマルを手で制し、綱手はやにわに「志村ダンゾウを憶えているだろう」と重々しく語り始めた。
「火影の座を巡って私と争った。……奴は木ノ葉暗部養成部門『根』の創始者だ。ダンゾウの耳に今回の件が入れば、まず間違いなくサスケは殺される」
「……それはまた…物騒ッスね」
頬を引き攣らせるシカマルの前で、冗談じゃないのだ、と綱手は首を振った。
「奴は『忍びの闇』と呼ばれている。里を想う気持ちは確かだが、そのやり口が私は気に入らなくてね。大蛇丸の手に渡るくらいなら殺すくらいやってのける―――そういう男だ」
「……要は、遅かれ早かれサスケは追われる立場となる。だからその『根』より先に…」
「そうだ。幅広い情報網を持つ奴の事。サスケの件などあっという間に聞きつけるだろう。その際、火影の権限を要いてなんとか言い包めるが、だからこそ、追手を差し向けておかないと不自然になる」
「けどそれは、建前上。本来の目的はサスケを無事に里抜けさせる事…ですか―――木ノ
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