つぐない
とあるβテスター、待ち合わせる
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方を見る───と、攻撃を跳ね上げられた体勢のまま、引き攣った顔で硬直していた。
「ちょっと、いきなり何するの。びっくりしたじゃん」
「……び」
「?」
「びびびビビらせんじゃねぇよ馬鹿野郎!反撃しろなんて言ってねぇだろうが!!」
「………」
どうやら反撃されることまでは想定していなかったようで、槍を持つ手が小刻みに震えていた。本気で驚いたらしく、少し涙目になっている。
そんなこと言われても、いきなり攻撃してきたのはそっちなんだけど……。
「で、今のは何だったの?僕だって結構驚いたんだけど」
「……いや、オマエ、今ので気付かないのかよ」
「え?」
斧槍を下ろしたリリアは、まだ少し引き攣った顔で僕を見た。「何とぼけてんだこいつ」といった目を向けてくる。
いや、気付かないも何も、今の流れに一体何の意味があったというのだろう。
近接戦闘のことを考えていたら突然攻撃されて、咄嗟に躱して反撃に移ろうとしただけで───って、
「あれ?」
「やっと気付いたか……」
「僕、反撃してた?」
「思いっ切りな。ぶっちゃけ死ぬかと思った」
そう、僕は“至近距離から”繰り出されたリリアの攻撃を躱し、それどころか反撃までしようとしていた。
斧槍のリーチは剣に比べて長いとはいえ、完全に、僕が苦手とする接近戦闘の間合いだ。
ましてや《ソニックスラスト》の攻撃速度を考えれば、僕が躱しきれるはずがなかった……の、だけれど。
「あれ……なんでだろ。急にリリアが攻撃してきて、何も考える余裕なんてなくて……」
「……オマエさぁ、もしかして」
と、リリアが何かを言いかけたところで。
「ユノくん、おまたせー!」
商店通りの方向から、見慣れた少女が歩いてくるのが見えた。
肩にぎりぎりかからない長さの黒髪。小柄な体型と幼い目鼻立ちからは想像できないけれど、これでも高校生だという(実を言うと、今でも信じられない)。
本人曰く「可愛くないから」という理由で重装備を嫌い、スカートタイプのハーフアーマーを愛用している。
そこだけ見れば可愛い女の子なのだけれど、その背に担がれている血色の大斧が全てを台無しにしていた。
このゲームが始まった頃からの僕の相棒であり、一部のプレイヤーから《首狩り》という不名誉な渾名を頂いている少女、シェイリだった。
「りっちゃんも、おはよ〜。ふたりとも早いねぇ」
「……おう」
ふにゃりと笑うシェイリに、リリアは気恥ずかしそうに目を逸らした。
人目を避けるようにして治安の悪い裏通りに身を置いてきた彼は、シェイリのようにストレートな感情表現をする相手には弱いらしい。
───素直じゃないなぁ。
口を開けば悪態ばかりついているリリアだけど、にこにこしながら話しかけてくるシェイリを拒みはしない
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